著者
立間 淳司 関 洋平 青野 雅樹 大渕 竜太郎
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J91-D, no.1, pp.23-36, 2008-01-01

本論文では,「周辺強調画像」(PEI:Periphery Emphasized Image)による輪郭輝度強調を処理の一部として含む,複数のフーリエスペクトルの重ね合わせによる特徴量表現を主たる特長とする,検索性能の高い新しい三次元モデルの形状類似検索手法を提案する.対象とするデータは,ISOの国際標準であるVRML形式(VRML2.0)で与えられるデータとする.VRMLでは,三次元物体形状を,基本的に多角形の集合(いわゆる``ポリゴンスープ'')で表現する.このため,立体としての三次元データの特徴量を,通常は仮定することができない.本提案手法では,VRMLで表現された三次元形状のデータベースが与えられたとき,これにまず,点正対(Point SVD)と法線正対(Normal SVD)を適用する.正対処理を通して,三次元モデルは,正規化された空間で(回転などの影響の少ない)向き合わせがほぼ完成した状態となる.次いで,正対処理された三次元形状モデルに対してレンダリングを行い,Depth buffer画像,シルエット画像,輪郭画像,ボクセルの四つの形状表現を生成し,それぞれのフーリエスペクトルを計算し,それらの低周波成分の組合せを特徴量とした.また,Depth buffer画像とシルエット画像に関しては,三次元物体の輪郭を強調するため「周辺強調画像」(PEI)に輝度変換するという工夫を施した.提案手法の有効性を検証するために,三次元物体形状の類似検索のベンチマークデータであるPrinceton Shape Benchmark,Engineering Shape Benchmark,及びSHREC2007の3種類のデータセットを用いた.従来手法との比較実験の結果,これまで知られている代表的な形状類似検索手法よりも優れた検索性能を得た.