著者
竹上 静夫 笹井 一男
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
no.24, 1964-10

(1)本実験は甜菜の移植にあたり分岐根,いわゆる"たこ足"と称する太い分岐根の発生と苗令との関係を調査するために,特別の根箱にて苗を養成し,一定の苗令に達した時期に根を切断して分岐根の発生状況を調査した.実験期間は昭和36年10月より翌37年6月までとし,なお冬期間はビニールハウス内にて生育を促進せしめて行なったものである.(2)根箱は縦30cm,横60cm,深さ30cmの木箱の前面の板を取りはずしのできるようにし,これに篩別土壌(65kg)を填充した.その際,箱の地表面より10cmの深さの位置に箱の内側に接して巾3cmの亜鉛鉄板にて60×30cmの中空の矩形の框を水平に埋没した.幼植物が所定の葉数に達した時に前板をはずし,この埋没框を前方に抜き取ることにより,土中10cmの深さの位置にて直根を含むすべての根を切断し,その後再びそのまゝ生育を続けさせるようにした.(3)供試甜菜は10月10日播,1箱8本立とし,根部切断期としては本葉2葉期(11月10日),局4葉期(11月16日),同6葉期(11月27日),同8葉期(12月7日)の4回とし,これらを翌年2月26日~3月8日,4月24~30日,6月6日の3回に根部を調査した.(4)上記葉位の範囲内での直根の切断により,その切断部位より太い分岐根が群生し,その数については葉位の進んだ時期の断根ほど多数に再生発根するが,その太さは比較的細く,しかも各分岐根間の太さの差が少ない.(5)再生した分岐根の太さについては,発根数の場合とは反対に,きわめて太い分岐根は生育の幼少な本葉2~4葉期の直根切断においてみられ,それより生育が進むと分岐根数は増すが太さは細くなる.(6)以上の断根は地表面より10cmの深さの部位での結果であり,それより浅い部位または深い層での断根についての反応は将来の研究にまつところである。
著者
竹上 静夫 笹井 一男
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
no.19, 1962-03

(1)本実験は岡山大学農学部圃場において,普通栽培した甜菜について,昭和35年8月15日を移植期として同7月15日播の株を大苗(草丈約30cm,本葉数12~14枚,根長12~13cmに切断)とし,7月21日播の株を小苗(草丈約15cm,本葉数4~6枚,根長6~7cmに切断)として移植栽培試験を行つた.(2)本圃における元肥施用の有無は小苗にとつてはその活着にきわめて密接な関係を生じ,元肥施用後に移植すると活着障害をおこして枯死株を続出するが,大苗では元肥施用の有無に無関係に活着する.(3)移植当時の切わら被覆は本試験の範囲ではその活着に見るべき差異を生じなかつた.(4)大苗区は小苗区より収穫根重が大きい傾向がみとめられる.(5)移植栽培の収穫期における肥大根体の長さは,用いた苗の直根の長さによつて決定せられ,直根の長い苗よりは長い根体が得られる.したがつて長い無傷の直根を有する苗を移植することが,移植栽培成功の第一の鍵となる.この状態の幼若苗を得る手段としてのペーパーポット法は合理的である.(6)移植栽培にあたつて生ずる太い分岐根は苗令と密接な関係が察知せられ,幼令苗の直根切断がその原因となるようである.この苗令は本実験では4~6葉またはそれ以下の苗と推定できるが,これについては別途検討中である.(7)移植区と直播区との根体の比較について,地上へ抽出する冠頸部にも顕著な差異が認められ,移植株において地上抽出部が著しく大きい.たゞしこの抽出現象は秋播栽培のものでは春季になつてもみられないので,秋播のものには当てはまらない。