著者
野々垣 香織 吉池 高志 竹下 芳裕
出版者
日本皮膚悪性腫瘍学会
雑誌
Skin Cancer (ISSN:09153535)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.285-289, 2017 (Released:2017-03-03)
参考文献数
20
被引用文献数
2 2

69歳,男性。約20年前から腰痛等のため適宜,ときには連日鍼治療を受けていた。約10年前から背中に内出血のような痕があった。半年前から同部に腫瘤を形成し出血がみられ,近医での生検の結果有棘細胞癌と診断,当科を紹介された。初診時背部中央に50×50×7mm大,有茎広基性腫瘤を認めた。表面にはびらん,出血がみられた。切除のうえ,中間層植皮術を行った。腫瘤部基部すなわちL2-L3の正中部ならびに脊柱起立筋外縁に沿って鍼治療痕が無数に存在していた。当該部では苔癬様反応とそれに伴うメラニン顆粒の滴落を認めた。標準鍼治療を超えた回数・深さの打ち込みといった過大な物理刺激だけでなく,2次的な苔癬様反応も発癌に与っているのではないかと考えた。