著者
野々垣 香織 吉池 高志 竹下 芳裕
出版者
日本皮膚悪性腫瘍学会
雑誌
Skin Cancer (ISSN:09153535)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.285-289, 2017 (Released:2017-03-03)
参考文献数
20
被引用文献数
2 2

69歳,男性。約20年前から腰痛等のため適宜,ときには連日鍼治療を受けていた。約10年前から背中に内出血のような痕があった。半年前から同部に腫瘤を形成し出血がみられ,近医での生検の結果有棘細胞癌と診断,当科を紹介された。初診時背部中央に50×50×7mm大,有茎広基性腫瘤を認めた。表面にはびらん,出血がみられた。切除のうえ,中間層植皮術を行った。腫瘤部基部すなわちL2-L3の正中部ならびに脊柱起立筋外縁に沿って鍼治療痕が無数に存在していた。当該部では苔癬様反応とそれに伴うメラニン顆粒の滴落を認めた。標準鍼治療を超えた回数・深さの打ち込みといった過大な物理刺激だけでなく,2次的な苔癬様反応も発癌に与っているのではないかと考えた。
著者
奥田 峰広 吉池 高志
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.110, no.13, pp.2115, 2000 (Released:2014-08-19)

皮膚の健常性を維持するためには,皮膚を清潔に保つことが重要であり,そのために各種身体用洗浄剤が古くより用いられてきた.一方,近年アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患と角層バリア機能との関連性が注目されている.そこで,本報では皮膚洗浄,特に洗浄剤中の界面活性剤やpHそして洗浄操作と角層バリア機能との関連について比較検討を行った.その結果,洗浄操作を行うことで角層水分蒸散量やリボフラピン浸透量を指標とした角層のバリア機能が影響を受けるだけでなく,その程度,すなわちこする操作の程度で角層バリア機能への影響が異なることも確認された.また,緩衝液を用いた洗浄では角層への影響は少ないが,界面活性剤を含むことで角層への影響に差が認められ,アルカリ性(pH9)では角層への影響が大きくなり,穏和な洗浄条件であっても角層細胞間脂質の溶出などの影響が認められた.一方,弱酸性(pH5)では角層バリア機能への影響も少ないことが明らかとなり,皮膚を洗浄する条件としては皮膚の生理的pHに近い弱酸性が望ましいと考えられた.