著者
竹中 信義 平川 昭彦 加納 秀記 津田 雅庸 武山 直志 服部 友紀
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.672-677, 2017-10-31 (Released:2017-10-31)
参考文献数
10

トラベルミン®は中枢性制吐薬および鎮暈薬として市販されており,成分は抗ヒスタミン薬のジフェンヒドラミンサリチル酸塩とキサンチン誘導体のジプロフィリンである。今回,致死量を超える量を内服した急性中毒例を経験した。症例:24歳男性。発熱,不穏状態のため当院に搬送され,口腔内乾燥,瞳孔散大,白血球高値,横紋筋融解を認めた。頭部CT,髄液検査,トライエージDOA®では異常所見を認めず,原因不明の意識障害として人工呼吸,血液浄化などの集中治療を行った。第2病日には意識清明となり,本人より市販のトラベルミン®を100錠内服したことを聴取した。その後,腎不全に陥ったが改善し第17病日に軽快退院となった。トラベルミン® による中毒例の報告は現在までに多くないが,近年インターネットの自殺サイトなどで服薬自殺が可能な薬剤として紹介されており,誰でも容易に購入可能であるため今後増加してくる可能性があり,中毒症状および治療法についての十分な認識が重要である。
著者
竹中 信義 佐々木 康二 西尾 博至 前野 良人
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.686-690, 2015-10-31 (Released:2015-10-31)
参考文献数
4

ADLが杖歩行の70代の女性が約1メートル四方の自宅玄関で転倒,両側股関節と左膝関節を屈曲し,右膝関節を伸展した状態で動けなくなった。本人が医療機関への受診を拒否したため,家族が水分や食事を与え2週間経過したが,徐々に衰弱したため救急要請された。救急隊の観察にて上記異常肢位に加え,左大腿に開放骨折創があり,同部から膿汁の流出を認めた。受傷機転より体位性圧挫症候群の発症が危惧されたため,ドクターカーが要請された。現場にて輸液投与し,体位変換を行わずに搬送を行った。搬送中も心室性不整脈を呈さず,初療室にて無動化の後に体位整復を行い,圧迫を解除した。最終的に左股関節離断に至ったが,長期にわたり同一肢位を強制されていた割には致命的な合併症を認めなかった。その要因として下肢血流が保たれ自動運動が辛うじて可能で,左大腿開放骨折創から軟部組織のドレナージがされ,水分摂取により腎不全に至らなかったことが示唆された。