- 著者
-
竹中 昭雄
- 出版者
- 養賢堂
- 雑誌
- 畜産の研究 (ISSN:00093874)
- 巻号頁・発行日
- vol.64, no.1, pp.35-40, 2010-01
日本の食料自給率はカロリーベースで41%と、食料の6割程度を海外に頼っている。家畜の飼料自給率についてはさらに低く、飼料用の穀物の9割以上は海外から輸入している。この数値はOECD加盟国中アイスランドをのぞいて最低水準であり、もちろん、食料安全保障上からも、「自国で消費する食料は国内で生産するべきだ」という理論は正しいが、日本国内ですべての食料を自給すると言うことは現実的には難しいと考えられることから、輸入に頼らざるを得ないが現状である。さらに、世界的規模で考えると、耕作地の劣化や砂漠化、途上国における人口の増加などから、世界的に食糧の需給は逼迫していると考えてよく、人類の英知を注ぎ開発途上地域を含めた地球上すべての耕作可能地域で効率的な食糧生産を行う必要に迫られている。この時、世界最高水準である日本の農業技術を開発途上地域における効率的な農業生産に活用することは、とりもなおさず日本における食糧安全保障につながるものであり、安心・安全な食糧輸入にも活用できることを意味する。国際農林水産業研究センター(JIRCAS)は開発途上地域における農林水産業の研究を包括的に行う我が国唯一の機関として「国際的な食料・環境問題の解決に向けた農林水産技術の研究開発」、「国際的な食料・農林水産業及び農山漁村に関する動向把握のための情報の収集・分析及び提供」を行うための国際共同研究を国際農業研究機関等との連携・協力の下で推進し、開発途上地域の農林水産技術の向上に貢献し最終的には日本の食の安心・安全を守ることにつなげようとしている。今般、地球温暖化は世界全体における大きな課題であり、農業は環境の上に成り立つ産業であるとともに、農業生産自体から発生する温室効果ガスをいかに抑制しながら効率的な生産を達成することができるのかが喫緊の課題であり、今後のJIRCASの新たな展開方向になるものと考えられる。