著者
荒木田 美香子 松田 有子 青木 恵美子 竹中 香名子 山下 留理子 六路 恵子 山崎 衣津子 町田 恵子 船川 由香
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.881-891, 2020-12-15 (Released:2020-12-31)
参考文献数
18

目的 全国健康保険協会(協会けんぽ)は保健師の保健指導能力の向上のための研修を各支部で実施している。そこで,協会けんぽの本部保健師と研究者らが都道府県支部のリーダー的保健師等を対象に,各支部でのロールプレイを活用した研修の企画とファシリテーション技術の獲得に向けた研修を実施した。本報告はその研修の効果を検討することを目的とした。方法 研修はインストラクショナルデザインを参考に構成し,対象者の分析,研修プログラムの開発,実施,評価を行った。研修の目標は,①ロールプレイの振り返りにおけるファシリテーションとファシリテーターの役割を理解する,②ファシリテーションの技法を理解する,③振り返りにおいてファシリテーターを行う自信ができる,④ファシリテーションの技法を用いた振り返りを行うことができるとした。研修の評価はKirkpatrick Modelに基づき,研修への反応,学習,行動の観点で質問紙による評価を行った。評価は研修開始前,研修直後,研修3か月後の3回実施した。研修は2016年8月に約4.5時間の1日研修を実施した。研修スタッフは3人であった。活動内容 研修の参加者は79人であった。知識・自信(0~10点)は,研修前の平均点は2.6~3.6であったが,研修直後は6.3~7.9,3か月後は6.0~6.9であった。研修内容への興味(0~10点)を3項目で尋ねたところ,平均点は8.1~8.6と高い評価であった。また,研修会終了後3か月間でロールプレイ研修会を支部内で開催した者は64.6%であった。ロールプレイのルールの周知やねらいの説明はそれぞれ96.1%,98.0%が実施していた。知識・自信は研修前にファシリテーション研修の受講経験のあった者のほうが,事前および3か月後で得点が高かった。研修3か月後の「ロールプレイにおいて,ファシリテーターの役割にはどのようなものがあるか」という自由記載は「ロールプレイ研修の基本と企画に関する意見」と「振り返りにおける役割に関する意見」に分類された。結論 参加者は本研修会での内容や使用した教材を概ね妥当と評価しており,研修後のファシリテーションの知識や自信が向上した。また,約65%が研修後にロールプレイを活用した研修を実施していた。これまでの学習経験の検討から,ファシリテーション技術の維持向上には繰り返しの研修が必要であることが示唆された。
著者
荒木田 美香子 藤田 千春 竹中 香名子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.417-425, 2019-08-15 (Released:2019-09-21)
参考文献数
26

目的 本研究は教員や保育士などの教育関係職,保健医療職の発達障害に対する認知を一般社会人と比較検討し,発達障害児者への社会の認知を向上させるための情報提供のあり方を検討することを目的とした。方法 2016年に842人の20-69歳の成人(男性418人,女性424人)を対象に発達障害名とその対応の認知について,Web を活用した横断調査を行った。職業(教育関係職,保健・医療職)および家族・友人に発達障害がいる者,それ以外に分けて認知状況を分析した。結果 「発達障害」を聞いたことがあると回答した者の割合は91.5%であったが,発達障害児者に対する何らかの対応や支援を回答できた割合(対応に関する認知)は26.5%であった。そのうち教育関係職および保健医療職の回答は,「発達障害」という言葉を認知していた割合は100%に近かったが,対応に関する認知の割合はそれぞれ63.9%,42.9%であった。回答者の発達障害に関する情報源はテレビやラジオ番組が67.1%と最も多く,次いでインターネットであった。学校と回答した者は11.3%,職場と回答した部分は9.9%であった。結論 教育関係職や保健専門職においては,発達障害の対応に関する理解を基礎教育および現任教育において充実させる必要性が示唆された。加えて,広くマスコミを介した情報提供を行うことの重要性が明らかとなった。