著者
結城 明彦 高塚 純子 竹之内 辰也
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.609-612, 2016-04-01

症例1は36歳女性で、6日前、右足底の色素斑を自覚した。色素斑は15×10mm大で、色調は褐色から橙色調で色素分布は均一で、左右対称、境界不明瞭、そう痒などの症状はなく無症候性であった。アルコール綿で拭っても脱色はみられず、ダーモスコピー所見で皮丘平行パターン(PRP)を認めた。早期の悪性黒色腫(MIS)と診断し、切除と植皮による再検を予定したが、初診8日後の入院時、色素斑は顕著に消退し生検のみで退院した。退院10日後の再診時に色素斑は完全に消退した。症例2は64歳女性で、2日前、左足底の色素斑を自覚した。色素斑は6×5mm大で、色調は赤みを帯びた橙色調で色素分布は均一で、左右対称、境界不明瞭、無症候性であった。アルコール綿で拭っても脱色はみられず、ダーモスコピー所見は特定のパターンは認めなかった。血腫疑いの臨床診断で、経過観察となった。23日後の再診時に色素斑はほぼ消失し、以後、有事再診としたが受診はなかった。カメムシ皮膚炎は虫体が分泌するヘキセナールなどアルデヒドの浸潤により発症するが足底では浸潤が角層内に留まるため炎症所見を欠き、色素沈着のみを呈する。両例は症状が似ておりカメムシが原因である可能性が推定され、原因不明の足底色素斑をみた場合はカメムシによる色素斑も鑑別の一つに挙げるべきと思われた。
著者
三浦 理 磯貝 佐知子 吉野 真樹 馬場 順子 梶原 大季 小山 建一 竹之内 辰也 谷 長行 田中 洋史
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.231-237, 2019-06-20 (Released:2019-07-02)
参考文献数
28

PD-1/PD-L1阻害剤に代表される免疫チェックポイント阻害剤を用いるがん免疫療法の開発は,肺がんの治療に大きな影響を与えた.これらの薬剤は,非小細胞肺がん患者の初回治療,2次治療さらには化学放射線治療後の維持療法において,標準治療と比較して生存期間延長効果が示されている.安全性と忍容性は非常に良好だが,これらの薬剤は免疫関連有害事象(irAE)を起こし得る.その頻度は稀であるものの,時に致死的となる重篤な事例に直面することがある.さらにirAEはいつ,どの臓器が罹患するかを予測することができず,未だ適切な管理方法は確立していない.未だ多くの医師は,irAEの管理に精通しているとは言いがたい状況である.これらの問題を克服するために,irAE発症のバイオマーカーを予測する検討や,集学的チームアプローチによる管理が試みられつつある.これらの検討は,患者教育を通したirAEの早期発見,管理に繋がる可能性がある.この総説では,肺がん治療におけるirAEに関わる現在のデータとコンセンサスをまとめた.