著者
西藤 岳彦 竹前 善洋 内田 裕子
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.71-75, 2009

2009年4月にメキシコで発生したインフルエンザの流行が豚インフルエンザウイルスの遺伝子再集合ウイルス(リアソータント)によるものであることが明らかになり,6月にはWHO(世界保健機関)も新型インフルエンザウイルスとしてパンデミックを宣言した。1997年にH5N1亜型の高病原性鳥インフルエンザウイルスによる人感染事例によって6人が死亡して以来,高病原性鳥インフルエンザウイルス(Highly Pathogenic Avian Influenza virus ; HPAIV)に対する注目が高まっていた中で起こった新型インフルエンザの流行によって動物のインフルエンザウイルスが人獣共通感染症として人類に与える脅威が改めて認識されたことと思われる。本稿では,動物,特に家畜(豚,馬,家禽)に存在するインフルエンザウイルスについて解説する。<BR>動物のインフルエンザはオルソミクソウイルス科(<I>Orthomyxoviridae</I>),インフルエンザウイルスA属(<I>Influenzavirus A</I>),インフルエンザA型ウイルス(<I>Influenza A virus</I>)によって引き起こされる。一方,人のインフルエンザは,インフルエンザA型,B型,C型ウイルスによるもので,それぞれの型はウイルスのNP(Nucleoprotein),M(Matrix)蛋白の抗原性によって区別される。