著者
伊藤 良一 杉谷 政則 稲垣 宏之 瀬戸口 裕子 内田 裕子 伊藤 建比古
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.278-285, 2013-06-15 (Released:2013-07-31)
参考文献数
14
被引用文献数
1

低タンパク食の継続摂取により,コラーゲン合成が低下し老化状態に類似したモデル動物が得られることが報告されている.今回加齢モデル動物でのコラーゲンペプチドの有効性を検討するために,タンパク含有率6 % の低タンパク飼料を3週間与えたWistar系の雄ラットにホルマリン濾紙法により皮下肉芽組織形成を誘導し,コラーゲンペプチドの経口投与が肉芽組織コラーゲン量の増加に及ぼす影響を検討した.また,他の食品由来ペプチド,タンパクの作用とも比較した.次の結果が得られた.(1)低用量群0.2 g/k体重,中用量群1.0 g/kg体重,高用量群5.0 g/kg体重のコラーゲンペプチドおよび対照群として水を7日間経口投与した.その結果,肉芽組織湿重量の濃度依存的な増加がみられた.また肉芽組織中に含まれるHYP量は肉芽組織湿重量と正の相関(相関係数0.837)を示した.(2)コラーゲン線維を特異的に染色するシリウスレッド染色により組織画像解析を行った.画像デジタル処理により肉芽組織の量,コラーゲン線維の密度,コラーゲン線維の量を求めたところ肉芽組織の量,コラーゲン線維の密度はコラーゲンペプチド摂取によって増加傾向が見られ,同じくコラーゲン線維の量に関しては有意に増加が認められた.(3)コラーゲンペプチド,カゼインペプチド,大豆ペプチド,乳タンパクをタンパク濃度1.0 g/kg体重となるよう経口投与し対照群と比較した.タンパク源投与群全ての群で肉芽組織湿重量の増加が認められた.特に,肩甲骨の肉芽組織湿重量はコラーゲンペプチドおよびカゼインペプチドで有意な上昇がみられた.仙骨両側の肉芽組織湿重量も肩甲骨の肉芽組織と同じくタンパク源投与群全ての群で湿重量の増加傾向が示されたが,有意差はコラーゲンペプチドのみみられた.肉芽組織中の水分含率に差はみられなかった.肉芽組織中に含まれるHYP量については肉芽組織湿重量と同様の傾向を示し,コラーゲンペプチド摂取によるHYP量増加が有意差をもって確認された.その他のタンパク源についても増加が示されたが,対照群と比較して有意な差ではなかった.これらの結果より,加齢モデルラットにおけるコラーゲンペプチドの経口投与は肉芽組織でコラーゲン量を濃度依存的に増加することが示された.また,ペプチド,タンパクの投与は種類に関わらず肉芽組織湿重量を増加させたが,本実験においてHYP量の増加とあわせて有意差が認められたのはコラーゲンペプチドのみで,組織コラーゲン量の増加におけるコラーゲンペプチドの優位性が示唆された.
著者
塚本 陽子 設楽 久美子 伊藤 郁乃 森田 三佳子 古田島 直也 見波 亮 内田 裕子 大島 真弓 新藤 直子 松井 弘稔
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.324-329, 2019-11-30 (Released:2020-01-28)
参考文献数
7

慢性呼吸器疾患患者の入浴に関する報告は慢性閉塞性肺疾患(COPD)を対象としたものが多く症例数も少ない.本研究の目的はCOPDを含む慢性呼吸器疾患患者の入浴中の経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)の変動を後方視的に調査し負担のかかりやすい動作を明らにすることで効率的な動作指導を検討することである.作業療法士が入浴評価を実施した61名を対象に入浴を構成する各動作項目(脱衣,洗体,洗髪,体拭き,着衣)後のSpO2値を調査した.加えて入浴評価と6分間歩行試験(6MWT)を同じ酸素量で実施した25名を対象に入浴時と6MWT時のSpO2最低値を比較した.入浴時のSpO2値は体拭きで最低値を示し,約35%の患者は6MWTのSpO2最低値を下回った.入浴時は体拭きでSpO2が低下しやすいことを考慮し指導を行う必要がある.また労作時の酸素流量設定は6MWTに加え入浴評価も実施した上で決定することが望ましい.
著者
西藤 岳彦 竹前 善洋 内田 裕子
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.71-75, 2009

2009年4月にメキシコで発生したインフルエンザの流行が豚インフルエンザウイルスの遺伝子再集合ウイルス(リアソータント)によるものであることが明らかになり,6月にはWHO(世界保健機関)も新型インフルエンザウイルスとしてパンデミックを宣言した。1997年にH5N1亜型の高病原性鳥インフルエンザウイルスによる人感染事例によって6人が死亡して以来,高病原性鳥インフルエンザウイルス(Highly Pathogenic Avian Influenza virus ; HPAIV)に対する注目が高まっていた中で起こった新型インフルエンザの流行によって動物のインフルエンザウイルスが人獣共通感染症として人類に与える脅威が改めて認識されたことと思われる。本稿では,動物,特に家畜(豚,馬,家禽)に存在するインフルエンザウイルスについて解説する。<BR>動物のインフルエンザはオルソミクソウイルス科(<I>Orthomyxoviridae</I>),インフルエンザウイルスA属(<I>Influenzavirus A</I>),インフルエンザA型ウイルス(<I>Influenza A virus</I>)によって引き起こされる。一方,人のインフルエンザは,インフルエンザA型,B型,C型ウイルスによるもので,それぞれの型はウイルスのNP(Nucleoprotein),M(Matrix)蛋白の抗原性によって区別される。