著者
井上 憲一 竹山 孝治 藤栄 剛 八木 洋憲
出版者
食農資源経済学会
雑誌
食農資源経済論集 (ISSN:03888363)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.1-11, 2014-10

近年わが国では,持続可能な農業を実現する手段としての環境保全型農法への転換に向けた政策的な支援が国や地方自治体で進められている。2015年から実施予定の日本型直接支払制度においても,こうした支援策として環境保全型農業直接支援対策の継続が見込まれている。環境保全型農法の実施に関しては,収量の減少や労働時間の増加に直面しやすく,その農家間の差異も大きい一方で,独自のマーケティングによる販売価格の向上により,収益性を確保している実態が明らかにされている(胡[1],藤栄[2],藤栄他[3])。環境保全型農法の実施主体は,従来の家族農業経営に加えて,集落営農組織や農外参入企業など,近年多岐にわたる。なかでも集落営農組織は,立地集落に対する地域貢献の役割も果たしており,特に中山間地域に立地する集落営農組織では,その役割が一層大きいことが指摘されている(竹山・山本[11],今井[6])。このような集落営農組織では,収益性の確保に加えて,集落の自然環境と生活環境の保全を実現するという形での地域貢献に対する志向も,環境保全型農法の導入に関係しているものと推察される。