- 著者
-
千原 大
阪本 貴士
村上 学
竹岡 友晴
大野 辰治
- 出版者
- 一般社団法人 日本血液学会
- 雑誌
- 臨床血液 (ISSN:04851439)
- 巻号頁・発行日
- vol.51, no.4, pp.253-257, 2010 (Released:2010-05-11)
- 参考文献数
- 15
脾摘患者は有莢膜細菌が原因で重篤な感染症を引き起こすことが知られている。今回B群溶連菌による致命的な脾摘後重症感染症を救命し得たため文献的考察を加え報告する。症例は34歳女性。22歳時にITPで脾臓摘出術を受けた後は無治療で経過良好であった。入院前日,夜間に嘔気,下痢,発熱を訴え受診。採血データ,身体所見上著変なく,急性胃腸炎として自宅にて経過観察となる。翌朝,激しい下痢,全身倦怠感のため再搬送され,来院時,体温34度台,血圧40台と急性循環不全を認めICUに緊急入院。身体所見上,関節痛や四肢の疼痛,チアノーゼを認め,採血では凝固異常,急性腎不全,肝機能障害などを認めた。抗菌剤,輸血,大量補液,CHDF, NIPPVなどで治療を行ったが,DICのため臓器障害が強く,治療に難渋した。後に血液培養よりB群溶連菌が確認され,同菌によるtoxic shock syndromeと診断した。ショック状態を離脱後は徐々に臓器障害なども改善し,第26病日に退院となった。