著者
竹村 勇司 菅野 茂 広瀬 昶 澤崎 坦
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.508-514, 1984-07-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
14

慢性的な低酸素暴露が,成長期ラットの心肺機能に及ぼす影響を明らかににるために,コントロールチャンバーを用いて実験を行なった.5週令のWistar系雄ラット35匹を7群次分けた.5週令で観察する群をC0,標高2,500m相当の低圧低酸素環境に5週令から暴露し,8および11週令で観察する群をT3,T6,11週令まで暴露したのち海面相当の常圧常酸素環境にもどし,22週令で観察する群をT17とし,それぞれの群に対して海面相当で飼育にる対照群C3,C6,C17,を設けた.温度,湿度,および二酸化炭素濃度はそれぞれ常に25°C,60%,および500~1,500ppmに制御した.各群に対して,形態的,心電図的,血液学的検査を常圧常酸素条件下で実施した.暴露群では対照群と比べて,成長にともなう体重の増加が抑圧され,QT間隔は延長し,心臓重量も大きい傾向にあったが,暴露による副腎重量の増大は,常圧常酸素環境へ戻すことにより回復した.赤血球数,Hb濃度,Hct値,および右心室重量はT3群で大きく増加したが,その後の増加は抑圧された.T6群では,平均電気軸のバラツキが大きくなり,肺重量体重比ならびにMCV,MCHが大きくなった.高地環境下でみられる心肺系の典型的な変化が低酸素暴露のみによって生じたことから,心肺機能にとって酸素分圧の低下が多くの高地環境要因の中で最も重要な作用因子であり,高地環境への適応過程として生理状態の安定に向け段階的な変化が生ずる可能性が示唆された.
著者
竹村 勇司 塗師 憲太郎 小笹 直子 原田 史 鎌田 壽彦 菅野 茂
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.99-108, 2004-09-24
被引用文献数
2

発情周期にともなうヒツジの試情時の性行動の推移を明らかにする目的で、発情が正常に回帰している成雌3頭に対して成雄3頭による試情を行い、雄が雌に関心を示さなくなるかまたは乗駕に至るまでの時間(試情所要時間)ならびに試情中の雌の排尿行動,雄による性的探査行動および求愛行動の発現回数を測定した。試情所要時間は、おおむね発情同期から発情前期に向けて延長し、乗驚が生ずる発情日は短く、発情後期1日目に再び延長し以後元のレベルに短縮してゆく推移パターンが認められた。しかし、雌個体によって変化が明瞭なものと不明瞭なものがあった。変化が明瞭に現れた個体では、排尿行動の発現回数が試情所要時間の推移と同様の推移を示したほか、雄による陰部嗅ぎやフレーメン行動の発現回数の推移パターンにも同様の変化が認められた。一方、こうした変化が不明瞭であった雌個体に対して、雄は発声,舌出し,頚ひねり,前脚による蹴り上げ(前蹴り)などの求愛行動を多く発現し、前蹴り以外の3つの行動の発現回数は、発情同期から発情前期に向けて増加し、発情後期1日目に再び増加し以後元のレベルに滅少していく推移パターンが認められた。また、前蹴り行動は発情日に比較的多く発生が見られた。以上の結果から、試情時における性行動の発現とその発情周期にともなう推移には雄側よりも雌側の要因がより強い影響を及ぼすものと推測され、雄が雌の発情周期を判断する際には主に雌からの嗅覚情報によって判断する方法と、嗅覚情報が乏しい場合には雄は代償性に視覚、聴覚、触覚刺激を雌に与え、それらに対する雌の反応によって判断する方法があるものと推測された。