著者
内原 香織 竹森 元彦
出版者
香川大学教育学部
雑誌
香川大学教育学部研究報告 第1部 (ISSN:04549309)
巻号頁・発行日
no.128, pp.77-96, 2007

本論文では、医師、教師、カウンセラー3者のロールプレイのプロセスを分析することを通じて、カウンセラーによる援助の独自性についての考察を試みた。分析の手法については、筆者が各援助者にインタビューを繰り返し行い、援助者の意図やねらいを明確にしていく「仮説生成-検証」(下山、2001)によって、より事例に近い解釈を試みた。また、クライエント役は筆者が行い、そこで得られた体験を、分析の手がかりとした。その結果、(1)カウンセラーという「役割」が、その独自のあり方を規定していること、(2)カウンセラーは、「消極的態度」(菊池、2004)によって、クライエントの自発性を回復させるという独自の関わりを行っていることが明らかになった。さらに、(3)筆者自身のクライエント体験を踏まえて、カウンセラーのあり方を検討した結果、「安心して語れる場をつくること」[感情に寄り添うこと」「自分との関わりを手助けすること」「意味が結晶してくるのを共に待つということ」という独自のあり方が明らかになった。以上のようなカウンセラーの援助が、クライエントの感情体験を呼び起こし、眠っていたクライエント白身の「自然治癒力」を高めることが明らかになった。最後に、(4)方法論としてのクライエント体験の可能性とその限界について考察を加えた。