著者
竹沢 純子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.103, 2003

1960年代半ば以降の離婚率上昇と連動し離婚理由(家庭裁判所への調停申し立て動機)で「性格の不一致」が上昇、70年代半ばに首位となり現在に至る。「性格の不一致で離婚する人が増えた結果離婚率が上昇」という因果の解釈が果たして統計的に正しい根拠に基づいているのかどうか、数字の出所である『司法統計年報』を中心に再検討を行った。分析の結果、司法統計における調査対象特性・バイアスの存在が明らかとなり、司法統計の数値をもって離婚理由の時系列変化を論じることの問題を指摘した。 結果としては、第一に、司法統計では、全離婚の約1割を占める家庭裁判所の手を経た離婚(審判離婚、調停離婚、協議離婚の届け出で調停成立したものも含む)に限定され、約9割を占める協議離婚は調査対象外である。家庭裁判所に離婚を申し立てるのは、婚姻期間の長い中高年割合が高く、離婚率上昇を引導してきた婚姻期間が短く協議離婚をする若年層の離婚理由の変化が司法統計の数値に反映されない。 第二に、申し立て趣旨別((1)離婚、(2)円満調整・夫婦同居、(3)生活費・婚姻費用分担・協力扶助の3分類。以下数字で表記)でみると、(1)離婚を申し立て趣旨とする割合は夫妻ともに増加、(2)は夫で半減、妻で1/3に減少、(3)では妻で倍増していた。こうした申し立て趣旨の変化が申し立て動機で「性格の不一致」を選択させる割合を高めてきたと考えられる。また離婚を申し立て趣旨とする約7-8割のうち調停の結果離婚で終結するのは約半数に過ぎず申し立て動機の数値は、約半数が離婚には至らないものの夫婦関係のトラブルを抱え調停を申し立てた離婚リスクの高い人を調査対象としていることに注意を要する。
著者
御船 美智子 竹沢 純子 李 秀真
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.95, 2004

本研究は、お茶の水女子大学21世紀COE「ジェンダー研究のフロンティア」が2003年度から5年次にわたり実施予定の「家族・仕事・家計に関する国際比較研究-韓国パネル調査-」の初年度データから、家計と家計管理に関する実態と意識のジェンダー差を明らかにすると同時に日本のデータ(家計経済研究所「消費生活に関するパネル調査」等)との比較を行う。なお、日本のデータは女性のみであるのに対し、韓国では男女双方に調査している点が特徴である。結果の概要としては、第一に、夫婦資産総額に占める自分名義資産の割合は夫「9割以上」(45.4%)、妻「なし」(46.1%)であり、韓国では妻の半数が資産を持っていないことが明らかとなった。第二に、収入の所有意識については、両国ともに「夫婦共通のもの」と思う割合が一番高いが、「夫の収入を自分のもの」だと思う妻の比率は、韓国よりも日本のほうが高い傾向がみられた。第三に、「家庭生活への貢献分」は、両国の女性はほぼ同じくらい(5割強)であったが、韓国の男女比較の結果では、男性が女性より自分の貢献分を多いと思う傾向が見られた。第四に、家計管理タイプをみると、専業主婦世帯においては、韓国では男女ともに「手当型(夫が収入の一部のみを妻に渡す)」が2割程度であったのに対し、日本では1割程度であり、韓国のほうが夫によるコントロールが強力であることがうかがわれた。共働き世帯の場合、韓国では「夫の収入も妻の収入もいったん共通の財布にいれ、そこから小遣いを配分する」という一体タイプが男女ともに60%以上であるのに対し、日本では約25%であり、両国で大幅な違いを見せている。