著者
竹田 和子
出版者
大阪音楽大学
雑誌
大阪音楽大学研究紀要 (ISSN:02862670)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.43-48, 2016-03-01

中部ヨーロッパ地域に、「ドイツ」の名を初めて冠した「ドイツ帝国」が誕生したのは、1871年、今から150年足らず前のことにすぎない。それ以前のドイツは18世紀になっても、300以上の領邦に分かれていた。ほぼ独立国家といってもよいこれらの領邦が一つにまとまるには相当な困難があったことは想像に難くない。しかし「国民」の一体感を高め、ドイツ統一に寄与した市民階級は、一方で新たな分裂を見ることになった。政治における近代の歴史的発展を、ドイツの歴史家オットー・ダンの5段階モデルに従って、1848年の3月革命までのドイツ史を概観し、ドイツの国民形成の過程について考察する。
著者
竹田 和子
出版者
学校法⼈ 大阪音楽大学
雑誌
大阪音楽大学研究紀要 (ISSN:02862670)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.66-71, 2018 (Released:2023-03-30)

産業が大きく発展した 19 世紀には、出版業界にも大きな変化が起きた。流通する出版物の量が増えるのに伴い、出版業者、書籍業者の中には他の出版社を吸収合併し、大企業へと発展するものも現われた。同時に彼らは自分たちの業界を組織化し、商売上のルールを整備しようとした。出版業者アドルフ・クレーナーは書籍店で徒弟修行を始め、結婚により印刷所を譲り受けて兄弟と共に出版社を運営、次第に事業規模を拡大し、他の出版社の買収により巨大グループ会社に成長させた。書籍業界の全国組織である書籍商取引所組合会長にもなった彼の経歴にはこの業界の動向がよく反映されている。それを辿ることで19 世紀後半から 20 世紀にかけての出版を巡る状況がより理解できるはずである。