著者
竹田 圭佑 小島 聖 渡邊 晶規 松﨑 太郎 細 正博
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.759-763, 2019
被引用文献数
1

<p>〔目的〕ギプス固定期間中の膝関節に振動刺激を行い,膝蓋下脂肪体の変化を予防できるか,組織学的に観察,検討を行うことを目的とした.〔対象と方法〕対象は9週齢のWistar系雄ラット14匹を用いた.無作為に通常飼育のみ行うC群(n=5),ギプス固定により不動化のみ行うI群(n=5),不動期間中に振動刺激を行うV群(n=4)の3群に振り分けた.不動化は右後肢とし,ギプス固定を行った.V群は,毎日15分間の振動刺激を加えた.実験期間は2週間とした.〔結果〕I群V群では膝蓋下脂肪体における脂肪細胞の大小不同,線維増生が認められたが,V群では変化は軽度であった.脂肪細胞の断面積は全ての群間において有意差を認めた.〔結語〕振動刺激は関節不動に伴う脂肪細胞の変化に対して予防効果がある可能性が示唆された.</p>
著者
竹田 圭佑 竹島 英祐 小島 聖 渡邊 晶規 松﨑 太郎 細 正博
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0726, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】関節拘縮の予防,治療は理学療法士の責務であるといっても過言ではない。関節拘縮の病理組織学的観察を行った先行研究では,関節前方にある脂肪体の萎縮,線維増生,うっ血を認めている。関節における脂肪体は,その柔軟性による関節周辺組織の保護だけでなく,関節運動の緩衝材としての役割を担うとされ,関節可動域運動(以下,ROM-ex)では脂肪体の可動性が確認されている。関節拘縮予防や治療の目的で,脂肪体に対しマッサージやストレッチを行い柔軟性の維持・改善を図る手技が散見されるが,脂肪体に対する機械刺激の効果や組織学的変化は不明である。そこで今回,ギプス固定期間中の膝関節にROM-exを行い,関節拘縮(膝蓋下脂肪体の変化)の予防効果を組織学的に観察,検討を行うことを目的とした。【方法】対象は8週齢のWistar系雄ラット15匹(256~304g)を用いた。1週間の馴化期間を設けた後,無作為に通常飼育のみ行う群(以下,正常群)(n=5),不動化のみ行う群(以下,拘縮群)(n=5),不動期間中にROM-exを行う群(以下,予防群)(n=5),の3群に振り分けた。不動化は右後肢とし,擦傷予防のため,予め膝関節中心に後肢全体をガーゼで覆い,股関節最大伸展位,膝関節最大屈曲位,足関節最大底屈位の状態で骨盤帯から足関節遠位部まで固定した。固定肢の足関節遠位部から足趾までは浮腫の有無を確認するために露出させた。予防群へのROM-exは,期間中毎日ギプス固定を除去し,麻酔下で右後肢に10分間実施した。ROM-exは約1Nの力で右後肢を尾側へ牽引し,その後牽引力を緩める動作を10分間繰り返した。速度を一定に保つためメトロノームを用い,2秒間で伸展―屈曲が1セット(1秒伸展,1秒屈曲)となるようにした。実験期間はいずれの群も2週間とした。期間終了後,実験動物を安楽死させ,股関節を離断して右後肢膝関節を一塊として採取した。採取した膝関節を通常手技にてHE染色標本を作製した。標本は光学顕微鏡下で観察し,病理組織学的検討を行った。観察部位は,関節前方の膝蓋下脂肪体とし,取り込んだ画像から脂肪細胞の面積を計測した。各群の比較には,一元配置分散分析を適用し,有意差を認めた場合には多重比較検定にTukey-Kramer法を適用した。有意水準は5%とした。【結果】拘縮群,予防群では同様の組織変化がみられ,膝蓋下脂肪体における脂肪細胞の大小不同,線維増生が認められた。脂肪細胞の面積は正常群1356.3±275.1μm2,拘縮群954.6±287.7μm2,予防群1165.0±316.6μm2で全ての群間において有意差が認められた(p<0.05)。【結論】ギプス固定による2週間の関節不動によって膝蓋下脂肪体には脂肪細胞の大小不同,線維増生が認められた。不動化により脂肪体は萎縮するものの,予防介入することでその萎縮は軽減できることが示唆された。