著者
福永 浩司 笠原 二郎 塩田 倫史
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

私達はこれまでに心臓型脂肪酸結合蛋白質(H-FABP)の欠損マウスにおいて常同行動と認知機能の異常、恐怖行動の亢進が起こることを見出した。脳内ドパミン神経はこれらの行動発現に関与すること、H-FABPはドパミンD2受容体との結合することから、H-FABP欠損マウスのドーパミン神経機能について解析した。最初にH-FABP欠損マウスにメタンフェタミンを投与し、ドパミンD2受容体の機能異常について調べた。また、ドパミンD2受容体拮抗薬であるハロペリドールによるカタレプシー現象を検討した。さらに、背側線条体におけるマイクロダイアリシス法を用いて、ハロペリドール刺激によるアセチルコリン(ACh)の放出を検討した。結果として、H-FABP欠損マウスではメタンフェタミンに対する感受性が有意に減弱した。さらに、H-FABP欠損マウスにおいてドパミンD2受容体拮抗薬の投与によるカタレプシー現象の有意な亢進が見られ、H-FABP欠損マウスではカタレプシーが亢進する同じ用量で、線条体でのハロペリドール誘発のACh遊離が顕著に亢進していた。免疫染色法によりH-FABPが背側線条体のACh神経細胞に強く発現することを確認した。さらに、培養神経様細胞を用いてH-FABPがドパミンD2受容体の機能を亢進させることを初めて証明した。これらの結果は、H-FABP欠損マウスに見られたカタレプシー現象の亢進には線条体におけるACh神経におけるD2受容体の機能異常が関わることを示唆している。