- 著者
-
笠木 実央子
大友 康裕
河原 和夫
- 出版者
- 一般社団法人 日本救急医学会
- 雑誌
- 日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
- 巻号頁・発行日
- vol.20, no.7, pp.349-360, 2009-07-15 (Released:2009-09-04)
- 参考文献数
- 11
- 被引用文献数
-
6
4
【目的】標準的な北米ER型救急医療施設と日本の現行の救急医療施設との診療システム比較を行い,本邦における救急医療の現状を把握する。【方法】関東近郊10の救急医療施設で働く医師へのインタビュー調査(各施設の診療体制に関する11項目,自施設の診療体制,日本の救急医療体制全体の問題点について)。【結果】(1)各施設の多様性および共通点:8施設で,重症度あるいは救急車/独歩来院によらず全ての救急患者の初期診療を救急部門で担当していた(24時間であるのは 6 施設)。 4 施設では初期診療を行うスタッフが原則全て救急専従医であり, 2 施設では救急部門は三次救急対応の患者のみを担当し,残り 4 施設では救急専従医と各科医師が共同で行っていた。救急部門で医師の交代勤務制が確立しているのは 3 施設,経過観察用のovernight bedを有するのは 3 施設,トリアージナースが常駐しその制度が確立しているのは 2 施設であった。また10施設全てで,救急部門で独立した入院病床が存在し,各診療科に振り分けられない病態の場合救急部門で入院後の管理を行っていた。(2)自施設の問題点:人員不足,混雑,入院依頼時における専門各科との調整,連携が難しいことなどが挙げられた。(3)救急医療体制全体の問題点:救急部門/各専門科双方の慢性的な人員不足,財政難,患者側の意識の変化による医療者の萎縮などが挙げられた。【結語】日本の各救急医療施設における診療体制はそれぞれ様々な点で異なっており,担当医療圏や施設の事情により多様な運営がなされていることが推察された。本邦においては北米型システムをそのままの形で導入/運用していくことは難しく,救急部門と各診療科との連携を強化し,地域や施設ごとに最適なデザインを考え運用していく必要がある。