著者
漆畑 直 村田 希吉 中本 礼良 吉行 綾子 大友 康裕
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.379-383, 2019-09-01 (Released:2019-09-01)
参考文献数
18

【目的】2015年の心肺蘇生(cardiopulmonary resuscitation, CPR)ガイドラインでは,胸骨圧迫の速さが100〜120 /min,深さが5〜6 cmと従来よりも厳格な規定となった。我々は新ガイドラインにおける胸骨圧迫は徒手的よりも機械的の方が遵守されると仮定し,当院におけるimmediate cardiac life support(ICLS)コース受講生を対象に評価した。【方法】ICLSコース受講後に徒手的CPRの採点を行った。またLUCAS®2自動心臓マッサージシステム(以下,LUCAS)を用いて機械的CPRの採点も行った。【結果】受講生(n=18)の徒手的CPRの結果は深さ3.65〜6.13 cm(中央値5.40 cm),速さ98〜128 /min(中央値115 /min)であり,ばらつきを認めた。一方,LUCASは深さが5.13 cm,速さが101 /minという結果であった。【結論】徒手的CPRではガイドラインからの逸脱を認めた。
著者
笠木 実央子 大友 康裕 河原 和夫
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.7, pp.349-360, 2009-07-15 (Released:2009-09-04)
参考文献数
11
被引用文献数
6 4

【目的】標準的な北米ER型救急医療施設と日本の現行の救急医療施設との診療システム比較を行い,本邦における救急医療の現状を把握する。【方法】関東近郊10の救急医療施設で働く医師へのインタビュー調査(各施設の診療体制に関する11項目,自施設の診療体制,日本の救急医療体制全体の問題点について)。【結果】(1)各施設の多様性および共通点:8施設で,重症度あるいは救急車/独歩来院によらず全ての救急患者の初期診療を救急部門で担当していた(24時間であるのは 6 施設)。 4 施設では初期診療を行うスタッフが原則全て救急専従医であり, 2 施設では救急部門は三次救急対応の患者のみを担当し,残り 4 施設では救急専従医と各科医師が共同で行っていた。救急部門で医師の交代勤務制が確立しているのは 3 施設,経過観察用のovernight bedを有するのは 3 施設,トリアージナースが常駐しその制度が確立しているのは 2 施設であった。また10施設全てで,救急部門で独立した入院病床が存在し,各診療科に振り分けられない病態の場合救急部門で入院後の管理を行っていた。(2)自施設の問題点:人員不足,混雑,入院依頼時における専門各科との調整,連携が難しいことなどが挙げられた。(3)救急医療体制全体の問題点:救急部門/各専門科双方の慢性的な人員不足,財政難,患者側の意識の変化による医療者の萎縮などが挙げられた。【結語】日本の各救急医療施設における診療体制はそれぞれ様々な点で異なっており,担当医療圏や施設の事情により多様な運営がなされていることが推察された。本邦においては北米型システムをそのままの形で導入/運用していくことは難しく,救急部門と各診療科との連携を強化し,地域や施設ごとに最適なデザインを考え運用していく必要がある。
著者
村田 希吉 大友 康裕 久志本 成樹 齋藤 大蔵 金子 直之 武田 宗和 白石 淳 遠藤 彰 早川 峰司 萩原 章嘉 佐々木 淳一 小倉 裕司 松岡 哲也 植嶋 利文 森村 尚登 石倉 宏恭 加藤 宏 横田 裕行 坂本 照夫 田中 裕 工藤 大介 金村 剛宗 渋沢 崇行 萩原 靖 古郡 慎太郎 仲村 佳彦 前川 邦彦 真山 剛 矢口 有乃 金 史英 高須 修 西山 和孝
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.341-347, 2016-07-20 (Released:2016-07-20)
参考文献数
26

【目的】重症外傷患者における病院前輸液と生命予後, 大量輸血および凝固異常との関連について明らかにする. 【対象と方法】Japanese Observational Study of Coagulation and Thrombolysis in Early Trauma (J–OCTET) で後方視的に収集したISS≧16の外傷796例について, 28日死亡, 大量輸血 (24時間Red Cell Concentrate : RCC10単位以上), 外傷性血液凝固障害 (Trauma–Associated Coagulopathy : TAC : PT–INR≥1.2と定義) の3つを評価項目として, 病院前輸液施行の有無の影響を検討するために多変量解析を行なった. さらに年齢 (65歳以上/未満), 性別, 重症頭部外傷合併の有無, 止血介入 (手術またはIVR) の有無により層別化解析した. 【結果】病院前輸液施行85例, 非施行711例であり, 両群間における年齢, 性別, 28日死亡, 大量輸血, 止血介入に有意差を認めなかった. 病院前輸液群ではISSが高く (中央値25 vs. 22, p=0.001), TACが高率であった (29.4% vs. 13.9%, p<0.001). 病院前輸液は28日死亡, 大量輸血の独立した規定因子ではなかった. TACの有無を従属変数とし, 年齢・性別・病院前輸液の有無・ISSを独立変数とするロジスティック回帰分析では, 病院前輸液 (オッズ比 (OR) 2.107, 95%CI 1.21–3.68, p=0.009) とISS (1点増加によるOR 1.08, 95%CI 1.06–1.10, p<0.001) は年齢とともに独立したリスク因子であった. 層別解析では, 65歳未満 (OR 3.24, 95%CI 1.60–6.55), 頭部外傷合併 (OR 3.04, 95%CI 1.44–6.42), 止血介入例 (OR 3.99, 95%CI 1.40–11.4) において, 病院前輸液は独立したTACのリスク因子であった. 【結語】ISS≧16の外傷患者に対する病院前輸液は, 28日死亡および大量輸血との関連は明らかではないが, TAC発症の独立したリスク因子である. 特に65歳未満, 頭部外傷合併, 止血介入を要する症例に対する病院前輸液は, TAC発症のリスクとなる可能性がある.
著者
村田 希吉 関谷 宏祐 大友 康裕 齋藤 大蔵
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.1023-1026, 2016-09-30 (Released:2017-01-18)
参考文献数
9

Damage Control Surgery(以下,DCS)の適応基準については多くの議論がある。今回,われわれは日本外傷データバンク(以下,JTDB)から開腹手術を受けた外傷患者4,447例を抽出し,DCSを受けた532例と通常の開腹手術を受けた3,915例を分析した。DCS群は来院時のバイタルサインが悪く,FAST陽性率,輸血率,死亡率いずれも高かった。ロジスティック回帰分析では脈拍,体温,意識レベル,受傷機転が独立したDCS予測因子であった。この予測因子をカテゴリー化し,重み付けをしてDamage Control Indication Detecting Score(DECIDE score)を作成したところ,死亡率との相関を認め,体温,意識レベル,受傷機転の3つの情報でDCSの適応判断が可能であった。Cut off値5点での死亡率は30.8%,感度64.8%,特異度70.0%であった。本スコアはプレホスピタルで判断可能であり,術前から外傷チーム内での意識共有が可能である。