著者
笹川 満広 山崎 昌三郎
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.157-163, 1967-12-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
14
被引用文献数
6 6

従来スズメガ類では密度依存的な多型現象が知られていなかったが,オオスカシバについて幼虫期の生息密度を変えることによって体色や発育がどんな影響をうけるかを調べたところ,明らかに密度に依存した変異がみられた。すなわち,1令期から集合状態で育った幼虫は体色が2令期から黒化し,摂食量や酸素消費量が少なく,幼虫および蛹の体重が軽いほか,死亡率がきわめて高い。したがって単独生育下で多く出現する通常の淡緑色幼虫が本種の生活により適応していると考えられる。
著者
笹川 満広 池田 正和 島岡 伸旭 MITSUHIRO SASAKAWA MASAKAZU IKEDA NOBUAKI SHIMAOKA
出版者
京都府立大学学術報告委員会
雑誌
京都府立大學學術報告. 農學 = The scientific reports of Kyoto Prefectural University. Agriculture (ISSN:00757373)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.42-45, 1969-10-15

クチナシの葉を食害するオオスカシバ幼虫の多型現象は幼虫期における生息密度に依存しておこり, また低温は褐色出現に影響を及ぼすことをさきに報告したが, 本実験では, 5令期幼虫体色, 発育期間および死亡率に及ぼす生息密度の累代的影響について検討した。その結果, 親世代の幼虫期における密度や5令期の体色型によって子世代の幼虫体色が決まるのでなく, むしろ子世代幼虫の発育初期における密度如何によって決定される。同一飼育密度を2代にわたって続けると, 子世代には黒化型幼虫の出現がやや増すが有意でない。それに反して, 同一密度での累代飼育によって, 子世代幼虫の発育は特に遅延し, 蛹の発育期間は著しく短縮する。さらに死亡率も累代的に増加する。しかし, 5令期幼虫の糞重量に及ぼす累代的影響はみられなかった。このように, 世代から世代への密度効果の伝達をみると, 幼虫期における環境条件に対する適応として多型が存在するといえる。The transmission of density effects to successive generations of the larger pellucid hawk moth was investigated. The larvae were reared at densities of one and two individuals per container, 12×3cm, at 24℃. The coloration of the F_1 generation larvae was not affected by both the parental density conditions during their larval periods and the parental colour types exhibited clearly in the fifth instar of larvae. It changed progressively from pale to dark, depending upon the population density in each generation. The transmission of density effects from one generation to another was concerned with the rates of the larval and pupal developments and mortality.