著者
笹川 英夫
出版者
名古屋大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

1.窒素固定活性発現機構の解析にあたり、ニトロゲナーゼおよびレグヘモグロビンの抗体調製を試みた。ダイズ根粒よりニトロゲナーゼMoーFeタンパク質およびレグヘモグロビンタンパク質を精製し、ウサギ抗体を調製した。これらの抗体を用いてクサネムの茎粒・根粒およびダイズ根粒におけるニトロゲナーゼ、レグヘモグロビンの相同性について調べた。クサネム茎粒と根粒におけるニトロゲナーゼは極めて相同性が高く、ダイズ根粒のそれとは部分的に相同であることが明かとなった。調製したレグヘモグロビン抗体とクサネム茎粒および根粒のレグヘモグロビンとのreactivityは極めて弱くそれらの相同性について確かな情報を得るにはいたらなかった。非マメ科植物根粒内ニトロゲナーゼはFrankiaの小胞体に特異的に局在することを免疫化学的電子顕微鏡法で明らかにした。2.茎粒形成に関わる温度、光、栄養など環境要因について調べた。外部より与えられた化合態窒素、菌接種部位の光の有無は茎粒形成にほとんど影響を与えなかった。これに対し温度は極めて重要であり、20℃において茎粒形成は著しく抑制された。また基部に近い節間および先端付近の節間では茎粒が形成されにくく、中央部の節間ではよく茎粒は形成された。茎粒の形成は皮目の発達と密接に関連していることが強く示唆された。3.いわゆるカウピータイプに属し、宿主を異にするリゾビウム(クサネム、セスバニア、ギンネム、ラッカセイ)を用い、それらの茎粒形成能力について調べた。セスバニア、ギンネム、ラッカセイからの分離菌はクサネムに対して茎粒形成能力は認められなかった。また有用マメ科作物への茎粒導入を試みるためラッカセイに対して上記リゾビウムを接種したが、いずれにおいても茎粒形成は認められなかった。