著者
笹木 義雄 森本 幸裕
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第51回日本生態学会大会 釧路大会
巻号頁・発行日
pp.414, 2004 (Released:2004-07-30)

鳥取砂丘では、防風林として植栽されたクロマツやニセアカシアが汀線に向かって砂丘内に侵入する現象が見られ、裸地面が減少し、安定化が進行している。本報告では、海浜植生を持続的に管理することを目的に、砂丘の安定化が、群落構造へ与えた影響について明らかにした。 鳥取砂丘の千代川河口付近の汀線から約500mに位置する砂丘列において、1986年に84箇所のコドラート(2.5m×2.5m)を設置した。各コドラートについて、ブラン_-_ブランケットの植物社会学的手法により、コドラート内に生育する植物種とその被度を測定するとともに、基点から各コドラートの標高を水準測量により1986年11月15日に測量した。これより16年が経過した2002年に、同地点について1986年に調査したのと同様な手法で、植生調査と測量を実施した。また、これらの調査結果をTWINSPAN法による分類、DCA法による序列化により比較した。 調査対象地域の植生は、1986年においては、コウボウムギ群落、ケカモノハシ群落、メマツヨイグサ群落の3タイプに分類されたが、2002年においては、これまでに見られた草本群落に加えて、アキグミ群落、クロマツ群落などの木本が優占する群落タイプも見られるようになった。また、種数は、1986年においては、15種であったのに対し、2002年においては、41種と増加がみられた。なかでもこれまで調査対象地域に見られなかった外来種のコバンソウ、マンテマ、ハナヌカススキなどの草本、ニセアカシアなどの木本の侵入が顕著であった。 このまま、砂丘の安定化が続くと海浜植生の優占する群落タイプが減少するとともに、樹林化が進行し、遷移が進行すると予想される。海浜植生を持続的に維持していくためには、調査対象地域周辺を攪乱することで裸地化を図り、砂丘を再流動化させることが必要と考えられる。
著者
根本 正之 笹木 義雄
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.20-29, 1993-05-28
被引用文献数
3

光環境をめぐる作物と雑草の競合は、これまで寒冷紗による遮光実験や圃場における作物と雑草との混植実験に基づいて解析されてきた。寒冷紗の下と圃場の群落内では光の波長組成が著しく異なるが、その違いに着目して解析した研究はほとんどない。本研究では、この二つの異なる光環境下でツユクサを栽培し、その生育特性について比較検討した。光環境が常に一定な寒冷紗処理区では、ツユクサの草高は対照区より高く、最終調査時の8月1日まで伸長した。また分枝の発生が顕著であり、光強度の増大に伴い葉数が増加した。一方、ギャップサイズの減少により光環境と土壌の水分条件が継続的に変化した草地内のツユクサは、草高の伸びが7月25日前後で停止、分枝の発生は全く認められず、葉数の増加はほとんど認められなかった。また葉重比が寒冷紗処理区や対照区より明らかに小さかった。 開花開始時期は対照区が最も早く、次いで寒冷紗処理区、草地内ギャップの順であった。しかしながら粗個体再生産効率には差が認められなかった。ツユクサの生産構造は可塑性が非常に大きかった。特に草地内のギャップでは光環境の違いと水分ストレスの影響を受け、寒冷紗処理区の個体とは明らかに異なった形質を示した。 以上のようにツユクサの生育特性は寒冷紗処理区と草地内ギャップでは著しく異なることが判明した。