著者
吉田 光司 亀山 慶晃 根本 正之 Koji YOSHIDA KAMEYAMA Yoshiaki NEMOTO Masayuki
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.10-14, 2009-06

ナガミヒナゲシが日本国内で生育地を拡大している原因を解明するため、1961年に日本で初めて帰化が報告された東京都世田谷区と、1990年代以降急速に生育地が増加した東京都稲城市で生育地調査を行った。ナガミヒナゲシの生育地数は、世田谷地区と稲城地区の双方とも道路植桝で最も多く、次いで駐車場や道路に面した住宅地となり、自動車の通過する道路周辺に多いことが判明した。ナガミヒナゲシの生育地は道路植桝から周辺の駐車場へと自動車の移動に伴って拡大したと考えられる。この過程を検証するため、ナガミヒナゲシの在・不在データを応答変数として、道路植桝から駐車場までの距離と舗装の有無、それらの交互作用を説明変数とするロジスティック回帰分析を行った。AICによるモデル選択の結果、世田谷地区ではいずれの説明変数(距離、舗装の有無、それらの交互作用)も選択されなかったのに対し、稲城地区では距離(P=0.07)および距離と舗装の有無の交互作用(P=0.04)がナガミヒナゲシの存在に負の影響を及ぼしていた。これらの結果から、(1)帰化年代の古い世田谷地区では生育地拡大が完了しており、主要道路からの距離や舗装の有無とは無関係にナガミヒナゲシが生育していること、(2)稲城地区では生育地拡大の途上であり、その過程は道路植桝からの距離だけでなく、距離と舗装の有無との交互作用によって影響されることが示唆された。
著者
能勢 裕子 亀山 慶晃 根本 正之
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.185-191, 2009-11

全国的に個体数の減少が著しいギンランの生育地内保全を図るため東京都立川市にあるギンラン自生地に調査枠を7ヶ所設け、2006年4月から2007年6月にかけて草丈、葉長、葉数、花数及び基部直径を調査した。ギンランは両年とも4月上旬に出芽、5月中旬までに地上部の伸長成長が停止した。2007年6月中旬に、調査した194個体のうち23個体を掘り取り、総ての個体について2cm間隔で根部の横断片を作成、顕微鏡下で菌根菌感染細胞の占有面積を計測した。ギンランにおける菌根菌感染率は不定根から生じた分枝根で最も高く、次いで不定根の先端、中間、根元の順で高いという傾向があった。各個体の花数、葉面積、乾物重量のそれぞれと菌根菌感染細胞面積の間に強い正の相関が認められた。したがって共生する菌根菌量の多少がギンランの生育に強い影響を与えていると考えられ、ギンラン個体群を自生地で保全するためには、菌根共生の維持が重要だと考えられる。
著者
吉田 光司 金澤 弓子 鈴木 貢次郎 根本 正之
出版者
日本雑草防除研究会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.63-70, 2009

ナガミヒナゲシが国内で急速に帰化している原因を,実験によって求めた種子発芽特性から考察した。野外の播種実験の結果,6月の種子散布後,散布当年の秋季と翌春に多くの出芽をみた。次に室内で,異なる温度と水分条件に貯蔵した種子を定期的に取り出す発芽試験を行った。その結果,(1)種子を湿潤・暖温条件に2∼3ヶ月間貯蔵してから5°Cで発芽させた場合,(2)湿潤・暖温条件に3ヶ月間貯蔵した後に湿潤・冷温条件に半月∼1ヶ月間貯蔵してから10∼20°Cで発芽させた場合,(3)30°C/10°Cの変温条件で発芽させた場合に高い発芽率を示した。これらの野外と室内の発芽実験の結果から,自然環境条件では夏季の暖温湿潤条件を経て地温が低くなる秋季と,冬季の冷温を経て地温が上昇する春季に多く発芽することが確かめられた。また,高温や室温の乾燥条件に約3年間貯蔵した種子や,暗条件ではほとんど発芽しなかったことから,土中では埋土種子となって長期間残ることが予測された。試験から得られたナガミヒナゲシの発芽条件から国内の分布を説明できた。また,同種が多く分布している国内外の地域の年平均気温と年間降水量は一致した。
著者
吉田 光司 金澤 弓子 鈴木 貢次郎 根本 正之
出版者
日本雑草防除研究会
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.63-70, 2009 (Released:2011-03-05)

ナガミヒナゲシが国内で急速に帰化している原因を、実験によって求めた種子発芽特性から考察した。野外の播種実験の結果、6月の種子散布後、散布当年の秋季と翌春に多くの出芽をみた。次に室内で、異なる温度と水分条件に貯蔵した種子を定期的に取り出す発芽試験を行った。その結果、(1)種子を湿潤・暖温条件に2〜3ヶ月間貯蔵してから5℃で発芽させた場合、(2)湿潤・暖温条件に3ヶ月間貯蔵した後に湿潤・冷温条件に半月〜1ヶ月間貯蔵してから10〜20℃で発芽させた場合、(3)30℃/10℃の変温条件で発芽させた場合に高い発芽率を示した。これらの野外と室内の発芽実験の結果から、自然環境条件では夏季の暖温湿潤条件を経て地温が低くなる秋季と、冬季の冷温を経て地温が上昇する春季に多く発芽することが確かめられた。また、高温や室温の乾燥条件に約3年間貯蔵した種子や、暗条件ではほとんど発芽しなかったことから、土中では埋土種子となって長期間残ることが予測された。試験から得られたナガミヒナゲシの発芽条件から国内の分布を説明できた。また、同種が多く分布している国内外の地域の年平均気温と年間降水量は一致した。
著者
吉田 光司 金澤 弓子 鈴木 貢次郎 根本 正之
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.63-70, 2009 (Released:2009-07-08)
参考文献数
17

ナガミヒナゲシが国内で急速に帰化している原因を,実験によって求めた種子発芽特性から考察した。野外の播種実験の結果,6月の種子散布後,散布当年の秋季と翌春に多くの出芽をみた。次に室内で,異なる温度と水分条件に貯蔵した種子を定期的に取り出す発芽試験を行った。その結果,(1)種子を湿潤・暖温条件に2∼3ヶ月間貯蔵してから5°Cで発芽させた場合,(2)湿潤・暖温条件に3ヶ月間貯蔵した後に湿潤・冷温条件に半月∼1ヶ月間貯蔵してから10∼20°Cで発芽させた場合,(3)30°C/10°Cの変温条件で発芽させた場合に高い発芽率を示した。これらの野外と室内の発芽実験の結果から,自然環境条件では夏季の暖温湿潤条件を経て地温が低くなる秋季と,冬季の冷温を経て地温が上昇する春季に多く発芽することが確かめられた。また,高温や室温の乾燥条件に約3年間貯蔵した種子や,暗条件ではほとんど発芽しなかったことから,土中では埋土種子となって長期間残ることが予測された。試験から得られたナガミヒナゲシの発芽条件から国内の分布を説明できた。また,同種が多く分布している国内外の地域の年平均気温と年間降水量は一致した。
著者
大塚 俊之 根本 正之
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.107-114, 1997-08-30
被引用文献数
1

畜産や農業に伴う土壌の富栄養化が耕地水系に沿って分布する河川周辺雑草群落に及ぼす影響を明らかにすることを目的として, 茨城県新治郡の帆崎川において雑草群落の構造と土壌環境の調査を行なった。スギ植林地に近い上流部では土壌中の窒素および炭素含量は少なく, 植生はメヒシバやイヌタデなどの雑草が優占するものの, ツリフネソウなどの野草的な種も多く含んでおり多様性が高いことが特徴であった。これに対して水田地帯を流れる中流部では土壌中の窒素および炭素舎量は上流部の5倍以上あり, 好窒素的な一年草のミゾソバやカナムグラが寡占して多様性の低い群落が形成されていた。また下流部では護岸工事がなされており, 攪乱の強い中洲ではクサヨシが1種優占群落を形成していた。中流部付近にはシロザが純群落を作る豚糞堆積場があり, この土壌は中流部のさらに2倍程度の窒素と炭素を含み, C/N比が低かった。これらのことから豚糞堆積場からの有機物や水田に施用された化学肥料が, 降雨時に流出して土壌が富栄養化し中流部の群落の多様性を低下させたものと考えられた。従来から良く知られている都市河川と同じように, 農村地域集水域の河川植生の動態も農業や畜産の集約化に伴う人為的な影響を強く受けていることが示唆された。
著者
瀬戸山 央 根本 正之 前田 良之 Setoyama Ou Masayuki Nemoto Yoshiyuki Maeda
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.57-63,

ミズゴケ属植物(Sphagnum)を用いた水質浄化の可能性を検討するため,リン酸濃度を0~1.6mgL^-^1に調整した培養液でオオミズゴケ(Sphagnum palustre L.)及びアオモリミズゴケ(Sphagnum recurvum P.)を90日間水耕栽培し,その生長量,成分組成及び水耕液からのリン吸収量を調査した。栽培終了時,オオミズゴケおよびアオモリミズゴケの草丈はそれぞれ,水耕液中のリン酸濃度0.1~0.8mgL^-^1および0.1~0.2mgL^-^1の範囲で20mm以上の値を示した。一方,両品種とも1.6mgL^-^1のリン酸濃度で草丈伸長は阻害され,栽培終了後の乾燥重量は最も低い値であった。植栽密度(m^2あたりの個体数)×乾物重量(個体あたりの乾物Kg)×植物体中リン含有量(mgKg^-^1乾物)から算出した単位面積あたりのミズゴケのリン吸収量(mgm^-^2),および酸性ホスファターゼ活性は,水耕液中のリン酸濃度が高まるにつれて両品種ともに増加した。また,水耕液中にリン酸が存在する場合,リン酸濃度に関わらず細胞膜H^+-ATPase活性は10~13μkatalmg^-^1 proteinの範囲にあり,ミズゴケは積極的に細胞内にリンを取り込んでいることが示唆された。以上の結果,ミズゴケ属植物の生育に最適なリン酸濃度は0.1~0.2mgL^-^1であり,1.6mgL^-^1のリン酸濃度条件下で生育は抑制されたが,リン酸を吸収し体内に蓄積できた。従って,下水2次処理水や河川,湖沼及び湿原にみられるリン酸濃度1.0mgL^-^1程度の低濃度リン酸汚染水の浄化にミズゴケ属植物が適応可能であることが明らかになった。
著者
吉田 光司 亀山 慶晃 根本 正之
出版者
東京農業大学
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.10-14, 2009 (Released:2011-07-26)

ナガミヒナゲシが日本国内で生育地を拡大している原因を解明するため、1961年に日本で初めて帰化が報告された東京都世田谷区と、1990年代以降急速に生育地が増加した東京都稲城市で生育地調査を行った。ナガミヒナゲシの生育地数は、世田谷地区と稲城地区の双方とも道路植桝で最も多く、次いで駐車場や道路に面した住宅地となり、自動車の通過する道路周辺に多いことが判明した。ナガミヒナゲシの生育地は道路植桝から周辺の駐車場へと自動車の移動に伴って拡大したと考えられる。この過程を検証するため、ナガミヒナゲシの在・不在データを応答変数として、道路植桝から駐車場までの距離と舗装の有無、それらの交互作用を説明変数とするロジスティック回帰分析を行った。AICによるモデル選択の結果、世田谷地区ではいずれの説明変数(距離、舗装の有無、それらの交互作用)も選択されなかったのに対し、稲城地区では距離(P=0.07)および距離と舗装の有無の交互作用(P=0.04)がナガミヒナゲシの存在に負の影響を及ぼしていた。これらの結果から、(1)帰化年代の古い世田谷地区では生育地拡大が完了しており、主要道路からの距離や舗装の有無とは無関係にナガミヒナゲシが生育していること、(2)稲城地区では生育地拡大の途上であり、その過程は道路植桝からの距離だけでなく、距離と舗装の有無との交互作用によって影響されることが示唆された。
著者
堀江 秀樹 根本 正之
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.340-345, 1990-12-25 (Released:2009-12-17)
参考文献数
19
被引用文献数
1

アレチギシギシ, ナガバギシギシ, ギシギシ, エゾノギシギシの4種におけるリンおよびアルミニウムの生育への影響を比較した。1) リンを4水準で施肥し, 栽培試験を行った結果, 4種はすべて無リン条件での生育は極めて不良であるが, リンを与えるとその生育量は著しく増加した。土壌中の可給態リン濃度が低い場合の全乾物重はギシギシ, エゾノギシギシ, アレチギシギシ, ナガバギシギシの順であった (Figs. 1, 4)。2) ナガバギシギシではT/R比は最小であったが (Fig. 2), 側根の占める割合が小さく, 根長は最も短かった (Fig. 4)。ナガバギシギシでの低リン耐性が低い要因は根長が短いことによると考えられる。3) アルミニウムを20ppm添加して4種を水耕栽培した結果, エゾノギシギシの全乾物重は他の3種より有意に大きかった (Table 1)。4) 日本の人工草地ではリン欠乏やアルミニウムの害が問題になるが, このような土壌条件下では低リン耐性および高アルミニウム耐性にまさるエゾノギシギシがナガバギシギシよりも生育しやすいと考えられる。
著者
大黒 俊哉 松尾 和人 根本 正之
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.245-256, 1996-04-25
被引用文献数
34

Successional patterns of vegetation on abandoned paddy fields and their levee slopes were analyzed in mountainous regions of central Japan. The samples were classified into two types, the Miscanthus sinensis type and Phragmites australis type, at the first division level of TWINSPAN, based on the dominant species regardless of location or fallow duration. The M. sinensis type occurred at dry sites on convex slopes and the P. australis type at wet sites on concave slopes. M. sinensis and P. australis have dominated paddy field stands for 20 years. Both the clump size and litter accumulation of M. sinensis increased with fallow duration, and this litter effect would be one of the important factors related to the long-term dominance of M. sinensis. During 20 years of fallow in the M. sinensis type, however, woody species invaded the gaps among the M. sinensis clumps. As individuals of M. sinensis become clumped and form heterogeneous spatial patterns including gaps, seeds dispersed from the levee slope vegetation and surrounding forests and /or buried seeds may establish themselves. On levee slopes, most stands were of the M. sinensis type, and dominated by woody species except in those that had lain fallow for three years. These results suggest that the succession of abandoned paddy fields in the surveyed regions is affected by soil moisture conditions related to micro-landform, litter accumulation, the growth form of dominant species and the levee slope vegetation as a seed source.
著者
根本 正之 大塚 広夫
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.184-192, 2004-09-30
被引用文献数
3 4

谷戸地形での雑草群落の構造的な特性とそれを維持してきた管理手法との関係を明らかにするため,同一谷戸内にある農道,畦畔および放棄水田内に発生した雑草の生態的特性と種間相互関係について比較検討した。132地点の方形区から得られた119種のサンプルをTWINSPANによって分類した結果,シバ,チガヤ,オギによって特徴づけられるスタンドがそれぞれ農道,畦畔,放棄水田に対応していることがわかった。地上部が頻繁に破壊される農道は陣地拡大型小型雑草のシバ,シロツメクサの他,木本類や大型雑草の芽生えもあり,不安定なスタンドであった。また年一回の刈取りが行われた畦畔には多くの種が含まれるものの,チガヤが超優占種となり,他種の現存量はヨモギとセイタカアワダチソウを除けば非常に小さかった。一方,放棄水田内ではオギが優占し,それとセリ,スギナやツル性雑草が空間をすみ分けて共存していた。雑草種の潜在的な草丈に基づく植生状態指数(IVC)は雑草群落の持続安定性の指標となるが,本調査地においてはその値は多様性指数と呼応していないことがわかった。
著者
郷倉 久徳 根本 正之 川原 淳
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.20(第20回環境研究発表会)
巻号頁・発行日
pp.111-116, 2006 (Released:2008-12-02)

公園内の生物資源を保護し利活用するためには、画一的な管理では不十分で、立地条件に基づいたきめ細かな管理が必要となる。本研究では国営昭和記念公園で保護の対象となっている野生のネジバナが自生する、管理手法の異なる草地で植生調査を行い、管理が草本群落の構造に及ぼす影響を明らかにした。次に景観上から有用植物とされるネジバナの生活史を調査し、ネジバナの栄養成長期にみられる周辺植生が、光を透過しやすいイネ科雑草であること、また草刈り後の刈草を除去することがネジバナを生育域内で保全する上で重要であることを指摘した。
著者
中村 直紀 根本 正之
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.27-33, 1994-05-13
被引用文献数
2 1

Eupatorium odoratum はキク科の多年生低木で熱帯アジアの焼畑放棄地にしばしば侵入し優占群落を形成する。焼畑放棄地でよくみられるベニバナボロギク、カッコウアザミ、ギョウギシバ、カタバミおよびE. odoratum の実生成長に及ぼす E. odoratum の他感作用とその庇蔭効果について検討した。石英砂を充填したポットに各植物の実生を移植し、その表面に粉末にした E. odoratum 生葉を添加して、これらを温室内の相対照度が各々100%、 30%、 10%の人口庇蔭条件下で栽培した。またE. odoratumの粉末の代わりに他感作用のみられない腐葉土の粉末を添加して同様の庇蔭条件で栽培し、両者を比較した。E. odoratum 粉末の添加と庇蔭の双方の処理を施した場合、キョウキシバを除く他の実生の成長は、庇蔭処理のみのものと比較してより強く抑制され、しかも抑制の程度は10%区の方が30%区より強かった。一方ギョウギシバの実生は庇蔭処理単独で著しく成長が抑制された。そのため庇蔭条件下での粉末添加による成長抑制効果は明らかでなかった。
著者
根本 正之 長崎 祐二 池田 正治
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.159-166, 1992-07-31 (Released:2009-12-17)
参考文献数
13

近年, 沖繩本島や八重山群島においてオガサワラスズメノヒエが優占する荒廃草地が増加してきた。オガサワラスズメノヒエは, 周年に亘って成長する, 生育型が叢生-ほふく型のイネ科多年生雑草で, 家畜に対しても有害である。したがってその防除法の確立が望まれるが, オガサワラスズメノヒエの生理・生態や防除に関する研究は殆どないので, オガサワラスズメノヒエが発生したいくつかの人工草地で生態学的調査を行った。オガサワラスズメノヒエは草地内で純群落を形成するまでには至らないが, 採草地周辺部あるいは刈り取り作業機の横すべりや, 牧草の取り残し等によって生じた裸地にいったん侵入すると, その形態的可塑性を有効に発揮し, 確実に空間を占有した。一度草地内に侵入したオガサワラスズメノヒエの防除は極めてむずかしいが, オガサワラスズメノヒエより草丈が高く, かつ, ほふく型で地表面を被覆する性質をそなえたジャイヤントスターグラスの牧草としての導入はオガサワラスズメノヒエ群落の抑制に有効であるらしいことがわかった。
著者
根本 正之 大塚 俊之
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.26-34, 1998-05-06
参考文献数
16
被引用文献数
5

水田畦畔を含む農耕地周辺に自生する小型植物のムラサキサギゴケ, オオジシバリ及びヤブヘビイゴを植栽した試験区はおいて, これらの小型植物が8月上旬から10月上旬にかけて発生した雑草に及ぼす影響について検討した。1) 供試植物ぱいずれも多年生のほふく-偽ロゼット型の生育型を示すが, その葉群構造は異なった。オオジシバリの草高が最も高く, 他2種はほぼ同様の草高で推移した(Fig. 1, Table 1)。いずれも 4月中旬からほふく茎の伸長が旺盛となった。ほふく茎の伸長速度はヤブヘビイチゴが最大であった(Fig. 2)。ムラサキサギゴケは地表面を密に被覆し, その地上部現存量は最大であった(Table 1)。2) 供試植物のない対照区と比べて, 供試植物を植え付けた処理区ではいずれも発生した雑草の地上部乾重が有意に少なく, 供試小型植物はよる発生雑草の生育抑制効果が認められた(Fig. 3)。供試植物のほふく茎が一様に処理区内を覆った7月23日時点の, 処理区全体に占める緑葉部分の割合(%)と, 最終除草(8月9日)後に発生した雑草の地上部乾重との間にぱ負の相関が認められた(Fig. 4)。3) 試験圃場内に発生した雑草は39種でそのうち約80%は一年生雑草であった。すべての区において, 発生雑草中メヒシバの現存量が圧倒的に多かった(Table. 2, Fig. 5)。処理区ごとに求めた発生雑草の多様性指数ぱヤブヘビイチゴ区が最大で, ムラサキサギゴケ区で最小であった(Table 3)。
著者
根本 正之 小林 茂樹 川島 榮 金木 良三
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.198-204, 1983-10-25
被引用文献数
2

永年草地の強害草であるエゾノギシギシの生態的特性を把握するため、静岡県富士宮市の朝霧高原に位置する優占草種の異なる採草地を対象に調査した結果、以下のことが判明した。1. ラジノクローバー優占草地やオーチャードグラスが優占していてもその株化が進行している草地ではエゾノギシギシの被度が高かった。オーチャードグラスとラジノクローバーが混在するケンタッキーブルーグラス優占草地では、生育する雑草の種数は多かったが、エゾノギシギシも含めそれらの発生量は少なかった。リードカナリーグラスを5年前に追播し、それが優占している草地では、そこに生育する雑草の種数、量とも少なく、エゾノギシギシは確認できなかった。2. 5月上旬、草地内の裸地には多くのエゾノギシギシの芽ばえが発生した。大きな裸地ほど多数の芽ばえを許容できるが、裸地内の芽ばえの発生は不均質であった。3. エゾノギシギシはラジクノローバーおよびケンタッキーブルーグラス優占草地ではこれらの牧草よりも草丈が高くなるが、リードカナリーグラス優占草地ではそれによって被われた。またエゾノギシギシの主茎の直径はリードカナリーグラス<ケンタッキーブルーグラス<ラジノクローバー<エゾノギシギシ純群落の順に大きくなった。4. エゾノギシギシの出現頻度が高い草地に形成されたリードカナリーグラスのパッチの内部では、エゾノギシギシはパッチの中心部に近い個体ほど徒長し、茎は細く、一株当りの茎数は少なかった。一方葉は立ち上がり受光体勢をよくするが、リードカナリーグラスとの競合期間の最も長い中心部では枯死消滅していた。
著者
根本 正之 笹木 義雄
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.20-29, 1993-05-28
被引用文献数
3

光環境をめぐる作物と雑草の競合は、これまで寒冷紗による遮光実験や圃場における作物と雑草との混植実験に基づいて解析されてきた。寒冷紗の下と圃場の群落内では光の波長組成が著しく異なるが、その違いに着目して解析した研究はほとんどない。本研究では、この二つの異なる光環境下でツユクサを栽培し、その生育特性について比較検討した。光環境が常に一定な寒冷紗処理区では、ツユクサの草高は対照区より高く、最終調査時の8月1日まで伸長した。また分枝の発生が顕著であり、光強度の増大に伴い葉数が増加した。一方、ギャップサイズの減少により光環境と土壌の水分条件が継続的に変化した草地内のツユクサは、草高の伸びが7月25日前後で停止、分枝の発生は全く認められず、葉数の増加はほとんど認められなかった。また葉重比が寒冷紗処理区や対照区より明らかに小さかった。 開花開始時期は対照区が最も早く、次いで寒冷紗処理区、草地内ギャップの順であった。しかしながら粗個体再生産効率には差が認められなかった。ツユクサの生産構造は可塑性が非常に大きかった。特に草地内のギャップでは光環境の違いと水分ストレスの影響を受け、寒冷紗処理区の個体とは明らかに異なった形質を示した。 以上のようにツユクサの生育特性は寒冷紗処理区と草地内ギャップでは著しく異なることが判明した。
著者
根本 正之 村山 英亮
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究. 別号, 講演会講演要旨 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
no.43, pp.20-21, 2004-04-16

一般に都市的環境下にある道路の植えます、公園、寺社の境内、校庭、グラウンドなどに侵入して<る雑草(侵入植物群)は程度の差こそあれ、踏み付けや刈り取りという人間による物理的な攪乱を受けている。これとは対照的に都市空地は上述のような攪乱がみられなくなった都市の空間として位置づけることができる。人間による攪乱が取り除かれたり、管理が放棄された場合、他からの侵入や埋土種子に由来する雑草の定着によって当該立地の二次遷移が進行、しばしば都市にふさわしくない景観が形成される。本研究では空地発生雑草を省力管理するための基礎的知見を得る目的で、人間によるさまざまな干渉が停止する直前の立地環境の違いが、その後の二次遷移系列にどのような影響を及ぼしているのか調査した。