著者
浦瀬 太郎 筒井 裕文 稲生 武士 陳 浩楊
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.107-114, 2017 (Released:2017-05-10)
参考文献数
21

生物処理機能に悪影響を与えるほど高濃度で廃水中に医薬品が含まれることは稀であるが, 抗菌薬服用者のし尿のみを処理する小規模浄化槽では生物処理機能への影響が生じる可能性がある。本研究では, 分解の遅い医薬品成分までをゆっくりと分解することを目指した二段式膜分離活性汚泥法において, わが国でも使用量の多い抗菌医薬品であるレボフロキサシン (LVFX) およびクラリスロマイシン (CAM) が流入した場合の生物処理機能への影響を調べた。LVFX 5 mg L-1の添加, あるいは, CAM 2 mg L-1の添加により, 40%以上硝化が抑制され, また, 毎日の膜洗浄が必要なほどの膜目詰まりが生じた。また, こうした悪影響は, 抗菌薬の添加開始より遅延して生じ, 添加を中止しても回復しなかった。この原因として, 活性汚泥による抗菌薬の吸着緩衝作用が重要であることが示唆された。
著者
浦瀬 太郎 筒井 裕文 中村 和也
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.11-17, 2018 (Released:2018-01-10)
参考文献数
14
被引用文献数
6 5

下水処理水には特有のにおいがあるが, その原因物質は明らかになっていない。本研究では, におい嗅ぎガスクロマトグラフ (GC-O) を用いて, 下水処理水の臭気の原因物質を7か所の処理場処理水を対象に調べた。反応タンクに覆蓋のある大規模な下水処理場処理水のにおい嗅ぎGC分析では, 2,4,6-トリクロロアニソール (TCA) の臭気を最も強く, あるいは, 二番目に強く感じた。これらの処理場の処理水に含まれる2,4,6-TCA濃度は11.6~21.2 ng L-1であり, 臭気閾値の100倍程度に達するものであった。また, すべての下水処理水で2-メチルイソボルネオール (MIB) およびジオスミンのかび臭を比較的強く感じた。さらに未同定の甘臭成分の下水処理水臭への大きな寄与が観察された。反応タンクに覆蓋のない小規模処理場の処理水には, かび臭成分に加えて, 大規模な処理場処理水にはほとんど見られない酸味臭, 腐敗臭/硫黄臭成分が含まれていた。