著者
藤田正憲
雑誌
衛生工学研究論文集
巻号頁・発行日
vol.27, pp.75-85, 1991
被引用文献数
2
著者
池 道彦 山下 光雄 清 和成 藤田 正憲
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

ハイテク産業での利用を中心に消費量が年々増加しているレアメタルによる環境汚染と資源としての枯渇防止を目的として、レアメタル還元・蓄積作用を有する特殊微生物の検索、それらを利用したレアメタル除去・回収バイオプロセスの構築を試みた。初年度は、セレン酸を元素態セレンに還元できるBacillus sp.SF-1株を利用したセレン含有廃水処理リアクターを構築し、1〜2mMの高濃度でセレン酸を含有する廃水を1日程度で元素態セレンまで還元できること、簡易な凝集沈殿処理や限外ろ過によって完全な処理・回収できることを示した。2年目には、SF-1株がヒ酸還元能を有することに着目し、ヒ素汚染土壌浄化のバイオレメディエーションプロセス構築の可能性を検討した。SF-1株は、ヒ酸塩還元に多様な炭素源を利用できる上、厳密な嫌気条件を必要とせず、有用な特性を持つことを明らかにした。また、ヒ酸塩、セレン酸塩、硝酸塩それぞれによって独立に誘導される別個の還元酵素を有する可能性が示唆され、セレン酸塩や硝酸塩が共存しても、ヒ酸塩還元が阻害されないことを明らかにした。さらに、同株が多様な固相中のヒ酸塩を還元できることを実証した。最終年度には、ラボスケールの回分式スラリーリアクター実験を行い、高濃度の菌体植種が不要であること、ヒ素溶出量が攪拌速度の影響をほとんど受けないことを明らかにした。これより、スラリーリアクターより低コストでの処理ができる連続式土壌充填カラムリアクターによってモデルヒ素汚染土壌浄化試験を行った。流入培養液の水理学的滞留時間1日の運転で、リン酸塩溶液による土壌洗浄と組み合わせることで300mg-As/kg-soil程度の汚染土壌を土壌含有量基準以下まで浄化できた。これら一連の研究により、微生物還元・蓄積作用を利用したヒ素汚染浄化・回収技術構築の可能性を示すことができた。