著者
筒石 賢昭
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究は、1994年に発表された『全米芸術教育標準』の目的、内容、及び実践への示唆を明らかにすることを課題とした。研究の目的は2点に大別され、第一点は、理論的研究として、『標準』の成立過程を歴史的側面より明らかにした。特に『標準』のスコープとシークエンスを平成10年12月に発表された我が国の学習指導要領と関連させながら分析した。第二点は、実践的研究として、この『標準』が実際に現場の芸術教育または音楽教育にどのような影響を及ぼしているか、イリノイ大学やミシガン大学の関係者のインタビューを含んだフィールド調査をすることによって明らかにした。以上の結果、『標準』の事例は、discipline-basedと呼ばれる芸術本来の持つ原理、機能を明らかにしつつも他教科、他分野との学際的なカリキュラムでもあることが分かった。この『標準』の意義はつぎのようなものである。(1)音楽における知識・技能を多様な角度から理解・獲得できるよう、「学際的・総合的な学習」を指向している。(2)「美的一般教育」としての芸術統合教育の発展上にある。(3)コンテクストとの関わりで音楽にアプローチする、「多文化音楽教育」に対応する内容を提示している。(4)芸術教科だけでなく、他教科との関わりを強調することで、音楽の学習を学校教育における他教科との学習に有機的に結び付けている.また教師教育という観点からも、「全米音楽教育者会議」MENCは大学の教員養成カリキュラムの実施にも積極的に支援した。