著者
筧 茂穂 藤原 建紀 山田 浩且
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.527-540, 2005-07-05
被引用文献数
2

鉛直的・空間的に密に測定されたAOUのデータからの線形回帰, あるいは表層と底層の栄養塩濃度の線形補間によって栄養塩現存量を算出し, その季節変動を明らかにした。下層のDIN現存量は, 1,500〜2,600tの範囲で変動し, 夏季に高く, 冬季に低かった。上層のDIN現存量は, 下層に比べ, 夏季は低いものの冬季はほぼ同じであった。DIPの現存量はDINよりも明瞭な季節変動をし, 冬季には上下層とも200tであるのに対し, 夏季には上層は400t, 下層では800tにまで増加した。現存量の時間変化量と海水交換による栄養塩変化量の差から見積もった生物・化学的要因による栄養塩の変化量は, 物理的要因(海水交換)による栄養塩変化量よりも大きかった。夏季の上層では, クロロフィル濃度の増加と対応してDIN・DIPが減少する場合があるものの, 両者が完全に同調するわけではない。夏季の下層における生物化学的要因によるDIP変化量は正であり, 溶出の影響が大きいことが示された。一方で, DIPの吸着や, 一年を通じて脱窒が起こっていることもAOUとレッドフィールド比から示された。