著者
藤原 建紀 肥後 竹彦 高杉 由夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.209-213, 1989-11-07 (Released:2010-03-17)
参考文献数
5
被引用文献数
11 4
著者
藤原 建紀 鈴木 健太郎 木村 奈保子 鈴木 元治 中嶋 昌紀 田所 和明 阿保 勝之
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.145-158, 2022 (Released:2022-05-10)
参考文献数
43
被引用文献数
3

海域の全窒素 (TN) ・溶存無機態窒素 (DIN) が大きく低下した大阪湾において, 生態系の栄養段階ごとに生物量の経年変化および季節変動パターンの変化を調べた。調査期間の1990~2019年には, 経年的水温上昇はほとんどなかった。DINの低下に伴って, 一次生産量が減り, クロロフィルで測った植物プランクトン量が減り, これが繊毛虫・カイアシ類などの動物プランクトンの減少, 仔稚魚量の減少へと連動していた。生態系全体としては, 各栄養段階の現存量がほぼ線形的に応答するボトムアップのシステムとなっていた。TNの低下が, DINの枯渇期間を夏のみから, 春から夏に広げ, これによる一次生産量の低下が, 上位栄養段階への窒素フローを減らしたと考えられた。また, 仔稚魚では, 内湾性魚種はどの優占魚種も生物量が大きく減少していた。一方, 広域回遊性のカタクチイワシだけは減らず, この一種のみが優占する状態に変化していた。
著者
大久保 慧 小野 健 中野 和之 宇城 真 藤原 建紀
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.233-240, 2016 (Released:2016-11-10)
参考文献数
14
被引用文献数
2 4

大阪湾をはじめとする閉鎖性海域では, 夏季の底層水の貧酸素化が問題となっている。貧酸素が環境や底生生物に与える影響には, 貧酸素の持続時間が重要な指標となる。国土交通省近畿地方整備局が公開している大阪湾水質定点自動観測データ配信システムの毎時データを用いて, 大阪湾の底層貧酸素の変動状況及び貧酸素状態の持続時間を2011年から2013年まで整理した。その結果, 多くの地点で夏季の底層DO (溶存酸素) の日変動幅は平均1 mg L-1以上, 月内での標準偏差は1 mg L-1以上を示した。大阪湾南東側の地点では, 強風時に貧酸素から回復する事例が多くみられ, 貧酸素が最も強くなる8月を除き, 貧酸素状態から頻繁に回復し, 貧酸素の持続時間は24時間未満となることが多かった。一方, 大阪湾北側の地点では, 強風に対する応答が南東側の地点より弱く, 貧酸素の持続時間も長い傾向にあった。
著者
藤原 建紀 高杉 由夫 肥後 竹彦
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究ノート (ISSN:09143882)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.38-46, 1989-08-31
被引用文献数
1

成層状態の内湾に風が吹くと躍層の深化・成層の崩壊・風が止んだ後の再成層化などの現象が起きる.水温・塩分・溶存酸素の自動観測装置を瀬戸内海の周防灘・播磨灘・大阪湾・江田島湾に長期間設置し,これらの現象を観測した.湾の長さが約60kmであり,上層と下層の密度差が5kg/m^3であった周防灘では,8〜12m/sの風によって,1日のうちに完全に成層が崩壊した.また風が止んだ後は,水平的な密度勾配による密度流が起き,約1日で再び成層状態にもどった.底層に及ぶ上下混合が強風によって起こされる頻度は,周防灘・播磨灘・大阪湾・江田島湾において,それぞれ4回/2月,3回/1月,0回/1月,0回/2.2月であった.
著者
高橋 鉄哉 藤原 建紀 久野 正博 杉山 陽一
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.9, no.5, pp.265-271, 2000-09-05
被引用文献数
11

1985-1992年に三重県が行った浅海定線調査のデータおよび京都大学が1997年9月2日に行った調査のデータを用いて, 伊勢湾において外洋系水が湾内へ進入する深度の季節変動を調べ, 湾内に形成される貧酸素水塊との関係を調べた。その結果, 外洋系水は, 4月から10月には中層より進入し, それ以外の季節には底層より進入すると推測された。外洋系水の進入深度の季節変動は, 湾内水と外洋系水の密度の季節変動が異なることによる。この進入深度の季節変動が, 貧酸素水塊の消長に寄与する可能性がある。
著者
亀田 卓彦 藤原 建紀
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.59-68, 1995-08-31

瀬戸内海の灘部の底層には夏季に低温・低酸素の水塊が形成される.本報ではこの水塊を底層冷水と呼ぶ.この中で,別府湾の底層冷水についてその形成過程と,交換時間・酸素消費速度を求めた.8月の交換時間は1700日であり,水塊の存在時間よりも長い.この交換時間を用いて,底層冷水内の海水の年齢組成を求めた.9月になってもその体積の70%以上が,成層ができる以前(4月)の水である.このことは,別府湾の底層冷水は冬季の海水が水温上昇期に加熱から取り残されてできたものであることを示している.底層冷水はまた貧酸素水塊でもある.この水塊中の酸素消費速度は0.5〜1.0gm^<-2>day^<-1>であった.別府湾底層での強い貧酸素化は,底層冷水と外部との間の海水交換が少なく,外部からの酸素の供給が少ないために起こる.
著者
筧 茂穂 藤原 建紀 山田 浩且
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.527-540, 2005-07-05
被引用文献数
2

鉛直的・空間的に密に測定されたAOUのデータからの線形回帰, あるいは表層と底層の栄養塩濃度の線形補間によって栄養塩現存量を算出し, その季節変動を明らかにした。下層のDIN現存量は, 1,500〜2,600tの範囲で変動し, 夏季に高く, 冬季に低かった。上層のDIN現存量は, 下層に比べ, 夏季は低いものの冬季はほぼ同じであった。DIPの現存量はDINよりも明瞭な季節変動をし, 冬季には上下層とも200tであるのに対し, 夏季には上層は400t, 下層では800tにまで増加した。現存量の時間変化量と海水交換による栄養塩変化量の差から見積もった生物・化学的要因による栄養塩の変化量は, 物理的要因(海水交換)による栄養塩変化量よりも大きかった。夏季の上層では, クロロフィル濃度の増加と対応してDIN・DIPが減少する場合があるものの, 両者が完全に同調するわけではない。夏季の下層における生物化学的要因によるDIP変化量は正であり, 溶出の影響が大きいことが示された。一方で, DIPの吸着や, 一年を通じて脱窒が起こっていることもAOUとレッドフィールド比から示された。