著者
野坂 千秋 箕輪 澄乃 星川 恵里 久保田 浩二 大越 ひろ 渡邊 乾二
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.10-16, 2001-02-20
被引用文献数
5

熟練したシェフの調理技術に着目し,非熟練者と比較し,ソース中の成分の状態や物性に与える,調理操作条件の影響について検討を行った。1.調理過程を比較したところ,ルーと牛乳の攪拌工程に顕著な差が見られ,シェフは非熟練者に比べ2倍近い攪拌速度を示した。2.ルーと牛乳を攪拌混合した直後の試料で比較すると,シェフではルー中の小麦澱粉・タンパク粒子が均一に分散し,油脂が細粒化した状態にあるのに対し,非熟練者では澱粉粒はタンパクと絡み合って凝縮し,油脂は油脂は大きな粒径を呈した。ルーと牛乳の攪拌速度の上昇に従い,シェフに近づく傾向を示した。3.流動特性において,シェフソースは非熟練者ソースに比べ,降伏値,チキソトロピー性,粘稠性係数が有意に大きい物性を示した。モデルソースにおいても,攪拌速度の上昇に従い,シェフソースに近づく傾向を示した。4.シェフソースは非熟練者ソースに比し,滑らかで,ボテつかず,粘りが少なく,クリーム風味の好ましいホワイトソースであることが示された。モデルソースにおいても,攪拌速度が速い程,同様の傾向を示し,シェフソースの食感や風味に近づいた。また,総合評価と相関の高かった「なめらかさ」は、澱粉・タンパク粒子径と粘稠性係数と高い相関を有することが示された。以上より,シェフの調製方法は,ルーと牛乳を高速攪拌する点で非熟練者と異なることが特徴として挙げられ,その調理方法が,良好なホワイトソースに反映していることが示唆された。