著者
篠原 大侑 岡田 岬 久島 達也 今井 賢治
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.266-272, 2019 (Released:2020-07-13)
参考文献数
16

【目的】今回、 膝痛および頚肩部痛を訴え、 さらに様々な不定愁訴を示す患者に対して鍼治療を行った。 胃膨満感と胃痛を中心とした消化器症状を強く訴えるようになったため、 胃電図による病態の把握と治療効果の確認を行ったところ、 治療後に症状の軽減とともに胃電図の正常波成分の増加を認めたため報告する。 【症例】73歳の女性。 身長は148.0cm。 体重は51.0kg。 初診時の愁訴は膝痛および頚肩部痛、 不安感であった。 24診目に胃膨満感および胃痛が第一愁訴となり、 全般的消化器症状評価 (Gastrointestinal Symptom Rating Scale; GSRS) は、 36点であった。 胃電図の計測は、 治療前後で各15分間行った。 鍼治療は30診目より左右の足三里 (ST36)、 豊隆 (ST40) に置鍼10分を行った。 【結果】鍼治療後の胃電図の正常波形を占める割合が71%と大きく増加しており、 power spectrumは明らかな安定とpowerの増大を伴っていた。 GSRSを確認したところ点数の減少を認め、 症状の改善を得た。 【考察】今回、 鍼治療により胃電図の正常波成分のpowerが増大した。 これは胃運動の亢進を意味しており、 いわゆる体性-内臓反射による迷走神経の興奮から、 胃電図の変化が得られたと考えられる。 さらに、 この胃電図の所見を患者に説明したところ、 安心を得て、 臨床症状の改善と治療継続のモチベーション向上に繋がった症例であった。 【結語】胃膨満感および胃痛を訴える患者に対して鍼治療を行ったところ、 胃電図の正常波成分のpowerが増大し、 さらに臨床症状の改善が得られた。