著者
篠原 鼎
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.413-425, 1989-12-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
33

中国における脳血管障害の治療法に, 頭皮鍼療法, 眼窩鍼療法, 醒脳開竅法がある。3つの鍼治療法とも, 急性期から後遺症期を含めた総有効率は, 約90%と高いが, 急性期から後遺症期を含めた全癒率は, 5%~58%と開きがある。脳梗塞の全癒率は, 頭皮鍼療法では47%で, 醒脳開竅法では58%で, 約10%の差がある。脳出血の全癒率は, 頭皮鍼療法では5%で, 醒脳開竅法では47%で, 約40%の差がある。眼窩鍼療法による全癒率は, 脳梗塞と脳出血を含めて24%である。加齢による全癒率の低下傾向は特にない。脳梗塞の急性期の全癒率は, 頭皮鍼療法では65%で, 醒脳開竅法では65%で, 同じである。また3か月以内 (急性期と安定期と回復期を含めたもの) の全癒率は, 頭皮鍼療法では56%で, 醒脳開竅法では58%で, 差がない。脳梗塞の後遺症期の全癒率は, 頭皮鍼療法では39% (4か月以上~11年以上を合計したもの) で, 醒脳開竅法では46%で, やや差がある。したがって頭皮鍼療法や醒脳開竅法は, 現代の脳梗塞の後遺症治療として期待できる。しかし, あくまでも急性期に行うことが, 治療効果を引き上げる。しかも醒脳開竅法のデータは, 頭皮鍼療法のデータと比較して, データ数が1桁上位なので, より信頼性が高いと言える。脳出血の急性期の全癒率は, 醒脳開竅法では55%であり, また脳出血の3か月以内の全癒率は, 醒脳開竅法では47%であり, さらに脳出血の後遺症期の全癒率は, 醒脳開竅法では27%であり, 醒脳開竅法は, 現代の脳出血の後遺症治療としても期待できる。しかし, あくまでも急性期に行うことが, 治療効果を引き上げる。3つの鍼治療法に共通している特徴は, 四肢等の障害部位に対して直接深部を治療し, 残存機能の最大利用を狙うだけではなく, あくまでも大脳中枢の血栓部位や出血部位に対しては, 遠隔的に刺激を与え, 四肢等の障害部位に対しては, 直接的に刺激を与え, 改善する治療法である。
著者
篠原 鼎
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.303-315, 1991-09-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
23

1. 自律神経機能の検査法を纒めると, 次のようになる。1) 健常者の安静仰臥位におけるMとCV安静仰臥位は, 副交感神経機能の優位状態である。安静仰臥位で, Mに異常があること自体, すでに自律神経の不均衡があると考えられる。Mの高値は, 交感神経の機能亢進型である。Mの低値は, 交感神経の機能低下型である。CVの高値は, 副交感神経の機能亢進型である。CVの低値は, 副交感神経の機能低下型である。2) 健常者の深呼吸負荷におけるMとCV安静仰臥位での深呼吸負荷は, より副交感神経機能の優位状態である。安静仰臥位に比較して, Mが減少しCVが増加するのが正常で, Mの減少CVの減少と, Mの増加CVの増加と, Mの増加CVの減少は, 異常である。3) 立位負荷におけるMとCV立位負荷は, 交感神経機能の優位状態である。安静仰臥位に比較して, Mが増加しCVが減少するのが正常で, Mの増加CVの増加, Mの減少CVの減少, Mの減少CVの増加は, 異常である。2. 健常者の年齢補正は, 次のようになる。1) 安静仰臥位における心拍数年齢補正式は,Y=126.153-16.187×LogeX(Xは年齢)。2) 安静仰臥位における変動係数年齢補正式は,Y=10.818-1.993×LogeX(Xは年齢)。3) 深呼吸負荷における変動係数年齢補正式は,Y=24.293-4.738×LogeX(Xは年齢)。4) 立位負荷における変動係数年齢補正式は,Y=7.398-1.277×LogeX(Xは年齢)。3. 一目瞭然であり, かつ全く新しいMCV図法を, 指尖容積脈波計に応用することにより, 安静仰臥位と深呼吸負荷と立位負荷の, MP-PとCVP-Pのデータを, MCV図にプロットすると, 交感神経機能や副交感神経機能の, 総合的な評価ができる。またMCV図法は, いろいろな負荷検査に対しても, 使用できるものである。ただし, 測定条件は心電図計よりも厳密にすることが大切である。