著者
川原 順子 篠崎 洋 高田 裕之 原 怜史 川根 隆志 竹端 恵子 捶井 達也 平岩 善雄
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.305-313, 2013 (Released:2013-06-07)
参考文献数
41
被引用文献数
1

症例は28歳の男性,20歳時に2型糖尿病と診断されピオグリタゾンとメトホルミンにて治療中であった.平成23年初夏よりソフトドリンクを多飲し血糖コントロールが悪化していた.同年8月に意識障害で搬送され,随時血糖1620 mg/dl, HbA1c 15.0 %(NGSP値),pH 7.295,総ケトン体の上昇,血清アミラーゼ548 IU/l,腹部CTで膵の腫大と周囲組織と前腎傍腔への炎症波及を認め,糖尿病性ケトアシドーシス(以下DKA)と急性膵炎と診断した.胆石を認めず,飲酒歴はなく,高脂血症を認めず,DKAによる急性膵炎と考えられた.入院後呼吸状態が悪化し,重症急性膵炎と診断した.持続的血液濾過透析(CHDF)を含む集学的治療で治癒した.ソフトドリンクに含まれる果糖(フルクトース)は,脂質・尿酸の合成を促進し脂肪組織の慢性炎症を惹起することで,急性膵炎の重症化因子として作用した可能性がある.