著者
長谷川 高平 荒井 康裕 小泉 明 寺井 達也 飯出 淳 篠永 通英
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.II_109-II_120, 2017 (Released:2018-04-01)
参考文献数
33

老朽化や地震によって多発する送配水システムの断水事故などを背景に水道事業体は管路システムの冗長化を進めている.一方,送水管路は大口径で交通量の多い幹線道路に敷設される事が多く,人口減少に合わせて非開削で口径のダウンサイジングが行えるPipe In Pipe(PIP)工法が注目を集めている.しかし,PIP工法を用いて断水を伴わずに冗長化を達成する管路更新計画の策定手法はこれまで検討されてこなかった.そこで,本研究では老朽化した送水システムを仮想し,更新案として二重化と系統連絡という2つの冗長化案,その比較として単純更新案の3つを対象に費用対効果分析を行なった.結果として,(1)管路システム冗長化の主便益は断水事故低減にある,(2)現行の社会的割引率やPIP工法の単価では,B/Cで比較した場合の冗長化の優位性が確保できないものの,実勢の経済状況を反映した社会的割引率の引き下げによって冗長化の優位性が得られる,(3)特定の距離以内に浄水場が隣接する場合,その浄水場規模の余裕を用いることで断水を必要としない冗長化管路更新が有効になる,の3点を明らかにした.