著者
梅宮 弘光 矢代 眞己 大川 三雄 土崎 紀子 野沢 正光 堀越 哲美 米山 真理子
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住宅総合研究財団研究論文集 (ISSN:18802702)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.265-276, 2007 (Released:2018-01-31)

山越邦彦は,1930年代に設計した2つの実験住宅において,次のような当時における新しい技術を導入した。1)将来の生活変化に対応可能な住宅建築のための乾式構造(トロッケンバウ),2)生理学に基づいた快適環境を実現する輻射熱暖房(床暖房),3)住人を生態系に位置づける循環型住宅諸設備(浄化槽,メタンガス発生装置等)。これらは,生活の快適性を介して人間の生命現象に密接に関係するものであり,その試みは,人間疎外につながる近代化に対してオルタナティブな近代建築像を提示しようとするものだったと考えられる。ここに,山越のアヴァンギャルドとしての姿勢をみることができよう。それはまた,今日さまざまな環境問題に直面している私たちにとって示唆に富む。