著者
川西 基博 小松 忠敦 崎尾 均 米林 仲
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.90, no.1, pp.55-60, 2008 (Released:2008-10-15)
参考文献数
14
被引用文献数
2 3

人工林から天然性の渓畔林への誘導を目的とし,渓畔域に位置するスギ人工林において間伐およびリター除去を行い,植物の定着との関係を調査した。発芽した出現種数,発生個体数,生残個体数は無処理区や巻き枯らし区よりも皆伐区や間伐区で多い傾向があった。リターを除去した方が発生個体数,出現種数ともに有意に多かった。また,渓畔林構成種の出現種数は増加したものの,フサザクラなどの一部の樹種が優占し,シオジやサワグルミなどの主要樹種はみられなかった。草本植物の渓畔林構成種はわずかしかみられなかった。伐採や林床処理によって天然更新が可能であると考えられたが,天然性渓畔林に近い林分へ誘導するためには,長期的な研究を行い,その結果によっては,一部の種の植栽や播種による導入も検討する必要がある。
著者
比嘉 基紀 川西 基博 米林 仲 崎尾 均
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.451-456, 2015 (Released:2016-04-19)
参考文献数
25
被引用文献数
1

日本の主要河川では,侵略的外来種ハリエンジュの分布拡大が問題となっている。本研究では,埼玉県荒川河川敷のハリエンジュ若齢林の伐採跡地で刈り取り試験を行い,本種の刈り取りによる管理について検討した。2007年 1月に伐採跡地に刈り取り頻度 (年 1~3回) の異なる調査区を 10個設置した。5年間試験を行い,処理間で萌芽再生量の経年変化を比較した。年 1回処理区では開始翌年にすべての調査区で萌芽再生量が増大した。3年目以降は,萌芽再生量は減少傾向にあったが,初年度と大きな差は認められなかった。一方,年 2,3回処理区では,開始翌年から萌芽再生量の減少が認められたことから,刈り取りを継続することで萌芽再生量は抑制できると考えられる。萌芽再生量の減少率をもとに萌芽再生量が 0.1 kg/100 m2となるまでの年数を推定した結果,年 2回以上の刈り取り区では 6~8年間であった。しかし,調査地周辺は明るく開けており,刈り取りを停止すると萌芽が再生する可能性がある。このため,実際にハリエンジュを枯死させるためには作業をさらに数年程度継続する必要があると推察される。