著者
沢村 正義 下田 満哉 米沢 崇夫 筬島 豊
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.7-13, 1977 (Released:2008-11-21)
参考文献数
13
被引用文献数
7 5

温州ミカン果汁の加熱臭成分である硫化水素およびDMSの同定ならびに定量を行った.両物質は,果汁の加熱によって顕著に増加し,100°C,8時間でそれぞれ約300 ppb,約560 ppbに達した.硫化水素は,定性釣に8種の全カンキツ果汁に検出されたが,一方DMSは温州ミカン果汁とバレソシア果汁のみに検出され,他のカンキツ果汁には検出されなかった.バレンシアの場合,生成した量は温州ミカンに比べてきわめてわずかであった.温州ミカン果汁のDMS発生因子としてpH,加熱温度およびカチオン画分の影響を検討した.その結果,pH増大とともに発生量は増加し,pH 7で最高値に達し,それ以上はほぼ一定となった.また,加熱温度80°C以下では発生量は少なかったが,90°C以上で急激に増加した.カチオン画分を除いた温州ミカン果汁では,加熱によってもDMSオミまったく発生しなかった.しかし,カチオン画分のみを加熱するとDMSが発生したことから,DMS前駆体がカチオン画分に存在すると推察した.果汁のアミノ酸分析では,各果汁を通してプロンが主要アミノ酸であった.含硫アミノ酸は,温州ミカンでは加熱前後にほとんど変化が認められなかった.