著者
翁長 謙良 米須 竜子 新垣 あかね
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.71-82, 1999-12-01
被引用文献数
2

本研究では,沖縄県におけるこれまでの赤土等流出防止に対する研究を踏まえ,土砂流出が及ぼす影響や年間流出量等を考察し,これまでの赤土等流出の歴史的経緯を概観し,対策の提言を行った。その結果,次のように要約できる。赤土流出の影響としては,道路や田畑等の損傷の物理的面,沿岸の景観の悪化という精神的面,川や海の底生生物への影響と云った生物的面等がある。土壌侵食と土壌保全の歴史的経緯の概略についてこれまでは,次の四つの時代,即ち(1)17世紀以前の焼畑農耕時代,(2)18世紀半ばの蔡温時代,(3)1920∿1930年の杣山(官有林)開墾時代,(4)1950年代後期∿現在までの時代に区分したが,昭和18年代の我謝栄彦の提言を考慮し,時代区分を六つの時代とした。急激な畑地造成の結果,土砂流出が著しいものとなり,現在では赤土等流出防止条例(1994)の施行によって,具体的な対応策が講ぜられている。赤土等流出防止条例の施行後,歴史的に侵食の最大原因とされていた開発事業に関してはかなりの改善策が取られ,流出量は大幅な減少を見ている。また対策としては,土木的対策として,圃場の区画の形態をUSLE(Universal Soil Loss Equation : 汎用土壌流亡予測式)を基に検討し,排水路,承水路の配置については耕区単位ごとに承水路を設けることや畑面の傾斜を緩やかにすること,また沈砂池等の砂防施設のあり方等についてはその大きさ,真水と濁水の分離排水を提言した。営農的防止対策としては,マルチングの効果やミニマムティレッジによる土壌保全の効用等を提言した。