著者
粟倉 大輔
雑誌
中央大学経済研究所年報 (ISSN:02859718)
巻号頁・発行日
no.45, pp.39-57, 2014-09-25

本稿の課題は,「再製茶女工」について描かれた当時の新聞・雑誌の記事を分析し,その変遷と社会的背景について論じることである。記事には,彼女たちを蔑視するものや,お茶場の熱気に苦しんだり,清国人監督から虐待を受けたりした彼女たちを憐れむものがあった。これら記事が書かれた社会的背景としては,居留地という不可視化された空間が職場であったことや,そこがコレラの侵入口でもあった開港場に近いことといった居留地の性格や,居留地内の日本人の警察権をめぐる問題や内地雑居の実施が関係した,当時の欧米人・清国人と日本人との間の摩擦や対立があげられる。他にも労働運動家の考えを規定した性別役割分担思想の存在などもあった。本稿で「再製茶女工」の記事を歴史的に分析した結果,製茶業史研究における「女工哀史的考察」にもとづく「再製茶女工」の評価は,明治期の一時期における新聞記事をもとにしたものに過ぎなかったことが明らかにされた。
著者
粟倉 大輔
出版者
中央大学経済研究所
雑誌
中央大学経済研究所年報 (ISSN:02859718)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.843-878, 2012-09-28

本稿は、明治期日本において製茶再製に従事した女性労働者=「再製茶女工」について論じ、その再評価を試みるものである。この再製技術は中国から導入されたもので、製茶輸出時に施された「火入れ(=乾燥)」と「着色」のことをいう。再製は居留地外商が経営していた「お茶場」で行われ、その現場は中国人男性が監督していた。 本稿では、お茶場における労働内容や内部のヒエラルキー、労働環境、賃金を詳細に検討した。これらの他にも、「再製茶女工」となった女性本人についても論じている。さらに、当時の新聞・雑誌における彼女たちに関する報道の分析を通じて、そのイメージ形成についても検討を加えた。以上を通じて、「再製茶女工」に対する「女工哀史」的な見方を修正する必要があること、また明治期日本の産業発展に未婚・若年労働者だけではなく既婚女性も大きな役割を果たしていたことを明らかにした。
著者
粟倉 大輔
雑誌
中央大学経済研究所年報 (ISSN:02859718)
巻号頁・発行日
no.43, pp.843-878, 2012-09-28

本稿は、明治期日本において製茶再製に従事した女性労働者=「再製茶女工」について論じ、その再評価を試みるものである。この再製技術は中国から導入されたもので、製茶輸出時に施された「火入れ(=乾燥)」と「着色」のことをいう。再製は居留地外商が経営していた「お茶場」で行われ、その現場は中国人男性が監督していた。 本稿では、お茶場における労働内容や内部のヒエラルキー、労働環境、賃金を詳細に検討した。これらの他にも、「再製茶女工」となった女性本人についても論じている。さらに、当時の新聞・雑誌における彼女たちに関する報道の分析を通じて、そのイメージ形成についても検討を加えた。以上を通じて、「再製茶女工」に対する「女工哀史」的な見方を修正する必要があること、また明治期日本の産業発展に未婚・若年労働者だけではなく既婚女性も大きな役割を果たしていたことを明らかにした。