著者
粟沢 尚志
雑誌
千葉経済論叢 = The Chiba-Keizai ronso (ISSN:0915972X)
巻号頁・発行日
no.37, pp.1-21,

本稿は、経営戦略論におけるポジショニング・アプローチに依拠する筆者の近年の研究を総合して、行政と民間との戦略的役割分担を議論することを目的としている。まず、地方自治体の戦略的ポジショニングを納税者、民間事業者、家族、高齢者の各々が持つ影響力を考慮した上で分析する。次に納税者が与える影響力を、地方財政の代表的理論である足による投票の考え方をマーケティング論的に解釈する。さらに、民間事業者から受けるそれについては、従来の地方財政論の研究とは異なり地方自治体の持つ知に着目する。そして、自治体が持つ知ナレッジの陳腐化を考慮すると、民間事業者と比べた場合の競争劣位は長期化するものの、動態的な変化を経て新たな競争優位を持つ安定的な状態へと再び戻ってくることを理論的に示す。最後に、それを公的介護保険にあてはめ、制度導入前からの現状分析や今後の変化の予想へと応用している。
著者
粟沢 尚志 Takashi Awasawa 千葉経済大学 CHIBA KEIZAI UNIVERSITY
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 = The Chiba-Keizai ronso (ISSN:0915972X)
巻号頁・発行日
no.43, pp.41-56,

本稿は、マイケル・ポーターの展開したポジショニング理論を福祉国家に応用し、福祉国家を取り巻く外部からの脅威と政府の能力を相互比較した上で、福祉国家がとるべくポジションの選択(つまり戦略)を考察している。通常、政府は外的脅威に立ち向かうべきと考えられている。しかし政府は決して万能ではないから、脅威を最も受けないポジションを選ぶことも戦略となる。そして、戦略を策定する源となるのが福祉国家のどの部門を重視するかいう選択と地域主権の確立である。ただし、知の集積や共有化が進む中期的ポジショニングを考えると、政府がその優位性を継続させるのは容易ではない。
著者
粟沢 尚志
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.65-78, 2013-12-21

本稿は、商店街に関して筆者が展開した理論的考察を、久繁哲之介氏の著書『商店街再生の罠』で見出された観察や導かれた含意と対応させて、商店街の役割とは、私益よりも公益を重視するような人を中心とした組織的市場ととらえるべきであることを明らかにしている。第1節では、心理会計モデルを用いて、コミュニケーションが顧客の心理的価値を高めるために重要であることを明らかにしている。第2節では、地域コミュニティが持つ価値観が、えてして不統一になりがちな商店街各店へ一貫性をもたらすために重要であることを明らかにする。第3節では、商店街と市民とのゆるやかなつながりが生み出されると、それが買い物の安心感をもたらし、さらに店の経営努力によって商店街の競争優位が高まることを示す。
著者
粟沢 尚志 Takashi Awasawa
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 The proceedings of Chiba Keizai University (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.57, pp.75-86, 2017-12

本稿の目的は、西千葉における地域通貨「ピーナッツ」に始まるまちづくり活動の意義を、渋沢栄一翁による道徳経済合一説から考察することである。第1節では、地域通貨「ピーナッツ」が単なる消費刺激的機能をもつ地域通貨ではなく、市民が有する人的資源を地域の場で発揮し、その発揮をとおして地域が活性化されるというシステムであることをみる。第2節では、コミュニティ論と日本型経営論(特に人本主義的経営)から地域通貨「ピーナッツ」が生み出した西千葉における人的ネットワークの特徴と意義を理解する。第3節では、渋沢翁の「論語と算盤」の考え方を使いながら、西千葉「ゆりの木商店街」における地元事業者による経営革新の動きをみる。第4節では、西千葉におけるまちづくりの代表例である「ようこそ西千葉へ」の意義を考え、さらにそれに続く最新のまちづくり戦略を紹介する。
著者
粟沢 尚志 Takashi Awasawa 千葉経済大学 CHIBA KEIZAI UNIVERSITY
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 = Chiba keizai ronso (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.50, pp.67-76,

本稿の目的は、西千葉における地域通貨「ピーナッツ」に始まるまちづくりの意義を、ポジショニング理論とコーペティション理論から考察することである。第1節では、地域通貨を牽引してきた経営者たち(ピーナッツクラブ西千葉)が渋沢栄一の唱えた論語と算盤の経営倫理観と整合的な考え方から行動してきたことをみる。第2節では、地域通貨の意義を経営学的にみると、コーペティション経営の協調(つまり市場拡大)にあたることをみる。第3節では、経営革新のために立ち上げられた異業種経営研究会の意義をポジショニング理論から考える。第4節では、2014年に始まった「ようこそ西千葉へ」プロジェクトの概要を紹介する。そこには、地元事業者の経営革新と地元事業者と学生との協働が両輪で進められるという新しいまちづくりのモデルがみられる。
著者
粟沢 尚志
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 (ISSN:0915972X)
巻号頁・発行日
no.32, pp.43-62, 2005-07

本稿の目的は、少子高齢社会における地方自治体の競争優位がいかに変化するかを説明することである。財政学では、市場の失敗の度合いが公的部門の役割を決める要因とされるが、どれほど市場の変化へ柔軟な対応をできるかも重要となる。それを明示的に考慮すると、高齢社会における地方自治体の政策効果は混沌が長く続くだろうとの結論を得る。