著者
間瀬 久美子
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 The proceedings of Chiba Keizai University (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.61, pp.1-31, 2019-12

近世後期光格天皇を挟む前後の時代の朝廷・幕府の災害祈禱を考察することが課題である。天明飢饉以降、大政委任論や国内外の危機的状況の深化に伴い、幕府も災害祈禱に直接関与するようになった。開港後の朝廷祈禱の中心は攘夷へと移っていくが、幕府の衰退と反比例して朝廷の国家祭祀権が単純に強くなったとのみいえない面もあり、多面的な考察が必要であることを提起したい。
著者
近藤 光
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 The proceedings of Chiba Keizai University (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.64, pp.59-80, 2021-06

現在,業務用・家庭用を問わずビデオゲームにおいて一般的に利用されているCGを用いた3D表現はいかに普及していったのか。そして,技術革新がビデオゲームを巡る競争にどのような影響を与えたのか,ナムコ,ソニー,セガ,任天堂の企業行動に着目しながら明らかにすることが本稿の目的である。 本稿では,戦後から1970年代までのCG技術の発展とコンピュータゲームへの応用について整理し,その後,1980年代から始まるアーケードゲームにおける3D表現の展開を明らかにする。更に,そうしたアーケードゲームの展開を受けて,家庭用ゲームにおいて3D表現が導入されていく過程を三つの企業グループの活動から明らかにする。最後に,日本のゲーム産業におけるCG技術導入の特徴について言及する。
著者
小池 順子
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 The proceedings of Chiba Keizai University (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.54, pp.1-19, 2016-07

本論文は、音楽における表現とはいかなる営為かという問いの解明を目指している。この課題を遂行するにあたり、美学と音楽美学の知見を手がかりに、表現の概念が様々に揺れ動いてきたことを論証した。造形芸術においては、表現概念の中で描写と表出の対立が長くあった。対照的に、音楽芸術は造形よりも早く、表出芸術として認識された。19世紀には作曲家が表現の主体として存在価値を高めた。しかし作曲家の表現としての音楽は、演奏行為を通じて初めて直観的になる。演奏行為が演奏者という別の主体に委ねられるとき、次の問いが導かれる。第一の問いは、演奏者の行為は作曲家の表現を単に再現する行為なのかという問い、第二の問いは、演奏者の演奏行為は表現になりうるか、なりうるとしたら表現者としての演奏者はいかなることを遂行しているのかという問いである。
著者
間瀬 久美子
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 The proceedings of Chiba Keizai University (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.59, pp.1-26, 2018-12

江戸中期寛延の三件の怪異と地震に対する朝廷祈禱は、賀茂・阿部・卜部等の卜占や先例を基に判断されたが、怪異は祈禱名目や祝詞の文言からは除去され、天皇の慎みや国家安全祈禱として、その災禍に対処した。一方、自然現象への合理的解釈も社会に浸透し、神社社家等は、怪異を神社造営や運営参加を要求する契機として利用するようになった。
著者
河原 礼修
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 The proceedings of Chiba Keizai University (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.61, pp.79-109, 2019-12

本論は自己評価点検の一つとして千葉経済大学で実施された学生の授業評価アンケートについて、学生満足度を向上させるためにどのような方法をとることが望まれるかを学生視点から検討し、学生満足度を向上させる要因について定量的な分析を行うことを目的としている。分析の結果、授業に対する学生満足度に授業内容への興味や関心、教員の授業に対する態度、および授業の難易度などが統計的に有意に影響していることが確認された。
著者
増田 公一
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 The proceedings of Chiba Keizai University (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.63, pp.69-79, 2020-12

近年,日本企業の内部留保の積み増しが積極的に行われている.直近の財務省の法人企業統計によれば,金融業・保険業を除く全産業において,その額はおよそ463兆円にものぼる.一方,企業の現預金は約223兆円となっており,その金額は1998年から著しく増加傾向にある.2018年時点の日本の名目GDPが約548兆円であることを踏まえると,国内企業の内部留保や現預金の額がいかに莫大なものであるかが分かる. このように近年の日本企業の特徴の一つである現預金の保有行動の決定要因を明らかにしようと,国内外の研究者たちによって多くの実証研究がなされてきた.本稿では,それらの実証研究をサーベイして包括的に整理するとともに,今後の課題について言及する.
著者
菅根 幸裕 菅谷 祐輔
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 The proceedings of Chiba Keizai University (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.56, pp.1-28, 2017-07

近世における六十六部廻国聖に着目し、宝暦年間全国を行脚した安房国長狭郡平塚村(千葉県鴨川市)の高梨吉左衛門の日記から、巡拝の実態を探ろうというものである。この聖は、全国をおよそ三年間かけて廻ったが、日記には具体的な泊所・報謝の様子がわかり貴重である。今回は紙数の関係から原文の紹介に留まるが、詳細な分析については稿を改めて行いたいと考えている。
著者
粟沢 尚志 Takashi Awasawa
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 The proceedings of Chiba Keizai University (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.57, pp.75-86, 2017-12

本稿の目的は、西千葉における地域通貨「ピーナッツ」に始まるまちづくり活動の意義を、渋沢栄一翁による道徳経済合一説から考察することである。第1節では、地域通貨「ピーナッツ」が単なる消費刺激的機能をもつ地域通貨ではなく、市民が有する人的資源を地域の場で発揮し、その発揮をとおして地域が活性化されるというシステムであることをみる。第2節では、コミュニティ論と日本型経営論(特に人本主義的経営)から地域通貨「ピーナッツ」が生み出した西千葉における人的ネットワークの特徴と意義を理解する。第3節では、渋沢翁の「論語と算盤」の考え方を使いながら、西千葉「ゆりの木商店街」における地元事業者による経営革新の動きをみる。第4節では、西千葉におけるまちづくりの代表例である「ようこそ西千葉へ」の意義を考え、さらにそれに続く最新のまちづくり戦略を紹介する。