著者
糸山 景子 亀屋 隆志 浦野 紘平
出版者
特定非営利活動法人 化学生物総合管理学会
雑誌
化学生物総合管理 (ISSN:13499041)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.178-191, 2006 (Released:2007-02-27)
参考文献数
37

近年、環境中に存在する微量な化学物質の暴露により、神経系や免疫系の異常をはじめとする様々な健康影響がもたらされる可能性が指摘されており、これらは従来「化学物質過敏症」等と呼ばれ、現在は本態性環境非寛容症 (IEI) (以下、本症) という呼称が提唱されている。本症を訴えている人 (以下、有訴者) の基本的特徴および発症原因の情報を整理することを目的に、国内の有訴者488人を対象に郵送調査を行い、278名 (57.0%) から回答を得た。 有訴者は中高年の女性が多かった。発症 (有訴者が本症の始まりと考えた状態) 前には、過半数の有訴者は本症をよく知らなかったことから、本症に関する知識と発症とは関係がないと考えられた。また、約半数の有訴者が医師の診断を受け、本症と判断していた。有訴者はアレルギー症状がある人が明らかに多かった。発症原因には、建物の新築・改築等の他にも家庭用殺虫剤、職業暴露、大気汚染等、多種多様な原因が回答されていた。本症に対応するとして知られる病院・診療所がない地域に住む有訴者は診断を受けていない人が多く、適切な診断と早期の治療のために本症に対応する病院・診療所の全国への拡充が求められていた。