著者
前田 慶明 加藤 順一 東 祐二 糸谷 圭介 村上 雅仁 嶋田 智明
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.160-166, 2010
参考文献数
31

【目的】本研究の目的は,脳血管障害患者(CVA者)を対象に,非転倒者と転倒者の患者基本情報や入院時の下肢Br.stage,入院時FIM,Berg Balance Scale(BBS),Mini-Mental State Examination(MMSE)を用いて,転倒予測を判断するための判断基準について検討し,臨床現場に則した実践的な指標を確立することである。【対象】対象はCVA者53例(男性30例,女性23例,平均年齢67.0 ± 11.1歳)とした。【方法】入院時記録から,入院中の転倒有無,年齢,性別,病型,発症から入院までの期間,入院期間,麻痺側,入院時の下肢Br.stage,入院時FIM,MMSEを抽出し,また入院時にBBSを測定し,これらの患者特性と転倒との関連性を検討した。【結果】少なくとも1回転倒を経験したCVA者は19例,転倒者率は36%であった。非転倒群と転倒群の比較において年齢,入院期間,入院時FIM,入院時Br.stage,入院時BBS,MMSEに有意差を認めた。ロジスティック回帰分析の結果では,入院時BBSのオッズ比のみが有意であった。ROC曲線において有効なcut-off値は31点であると判断した。【結論】入院時のバランス能力がCVA者の転倒リスクと密接に関係しており,転倒予測を数値化することが可能となり,転倒予測する上でBBSが有用な指標である可能性が示唆された。