著者
上杉 雅之 嶋田 智明
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.551-554, 2008 (Released:2008-10-09)
参考文献数
18
被引用文献数
1

[目的]知的障害を伴う症例3名を対象にAberrant Behavior Checklist(ABC)を用いた評価を施行し紹介することである。[対象]知的障害を伴う脳性麻痺2名とスミス・マゲニス症候群1名の計3症例とした。[方法]小児理学療法の経験のある理学療法士がABCのマニュアルと評価表を翻訳し,そのマニュアルに従い対象3名に対して評価を施行した。[結果]症例Aは I 攻撃性7点,II 引きこもり6点,IV多動性8点,V不適切な言語2点を示した。症例BはI攻撃性3点,II 引きこもり4点,IV多動性2点を示した。症例CはI 攻撃性9点,II 引きこもり1点,III 常同性5点,IV多動性14点を示した。ABCは知的障害の問題行動を短時間で評価できる有用な尺度の一つであると言えるだろう。
著者
徳久 謙太郎 鶴田 佳世 小嶌 康介 兼松 大和 三好 卓宏 高取 克彦 庄本 康治 嶋田 智明
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.167-177, 2012-06-20 (Released:2018-08-25)
被引用文献数
1

【目的】脳卒中患者の日常生活活動に関連した立位・歩行時の身体動作能力を評価する,ラッシュモデルに適合した新しい尺度,脳卒中身体動作能力尺度(SPPS)を開発すること。【方法】脳卒中患者の日常生活場面の観察をもとに,身体動作25項目から構成される仮尺度を作成した。この仮尺度を2施設の脳卒中患者102名に5段階評点を用いて実施し,評点段階および項目をラッシュ分析にて解析して本尺度を完成させた。またこの尺度の一次元性および尺度全体の信頼性を検討した。【結果】評点段階分析では軽介助と監視の段階が統合され,4段階評点となった。項目選択分析では,9項目が除外され,16項目から構成されるSPPSが完成した。SPPSの一次元性および尺度全体の信頼性は良好であった。【結論】SPPSは脳卒中患者の日常生活活動に関連した立位・歩行時の身体動作能力を評価する尺度であり,その間隔尺度化が可能な特性は,臨床および研究に有用であろう。
著者
アルカバズ ユセフ 嶋田 智明 小川 恵一 有馬 慶美
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C4P2159, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】本研究の目的は,重さの異なるリュックサックを背負った際の,体幹姿勢と体幹・下肢の筋活動の変化について分析することである.この領域の先行研究においては,リュックサックを背負うことと腰痛の関連性が指摘されている.しかしながら,多くの研究が学童児を対象としたものであり,成人を対象としたものは少ない.そこで本研究においては成人におけるリュックサック負荷の影響を確認することとした.【方法】対象は1 9名の健常男子大学生(平均年齢は21±3歳)であった.方法は,4つの異なる重量のリュックサックを負荷した立位で筋活動および姿勢を測定した.4つの立位肢位は,(1)リュックサックを背負わない立位,(2)被検者の体重の10%に相当するリュックサックを背負わせた立位,(3)15%のリュックサックを背負わせた立位および(4)20%のリュックサックを背負わせた立位であった.筋活動は両側の腹直筋,脊柱起立筋,内側広筋および大腿二頭筋を表面筋電計で記録した.一方,体幹姿勢はVICON250を用いて,矢状面,前額面および水平面で記録した.なお,データの記録は開始から10秒後の5秒間行った.また,疲労の影響を考慮しすべての測定の間に1分間の休憩を挿入した.得られたデータの統計処理はRepeated ANOVAを用い,有意水準を5%未満とした.【説明と同意】対象者には,口頭および書面にて研究趣旨,方法および実験に伴うリスクについて説明し,書面にて同意を得た.【結果】脊柱起立筋,内側広筋および大腿二頭筋の筋活動はリュックサック重量の変化に伴う増加率に差は生じなかった.一方,腹直筋の活動は,リュックサック重量の増加に伴い増加した(P<0.05).しかしながら,そのリュックサック重量の増加に伴う筋活動の増加率は直線でなく,負荷なしの立位肢位と体重の10%に相当するリュックサックを背負わせた立位肢位の間で最も高い増加率を示し,15%,20%では緩やかな増加率であった.一方,体幹姿勢の変化は,リュックサックを背負わない立位肢位を0°とした場合,体重の10%に相当するリュックサックを背負わせた立位肢位で3.37°伸展し,その後の15%,20%でもそれぞれ3.02°,3.90°とリュックサック重量の増加に伴う変化は確認されなかった.しかしながら,リュックサックを背負わない立位肢位と比較した場合,すべての重量で有意に伸展した(P<0.05).【考察】リュックサックを背負わない場合と比較して,リュックサックを背負うことにより腹筋群の筋活動と体幹伸展角度が増加した.しかしながら,筋活動はリュックサック重量の増加に伴って増加したのに対して,伸展角度はリュックサックを負荷した際には増加したが,その角度はリュックサック重量に左右されなかった.これは,リュックサック重量が増加しても一定の姿勢を保つための身体の生理的反応と考えられる.この傾向は,体重の20%に相当するリュックサックを背負わせた際に最も顕著となったため,腰部へのリスクという観点から避けるべきであろう.しかしながら,今回の研究においては,リュックサックの使用頻度,使用時間,種類そして使用者の幅広い年齢層に関する因子については言及できないため,今後,それらの因子の影響について検討すべきである.【理学療法学研究としての意義】本研究は理学療法研究の中でも疾病および傷害予防に属するものである.近年,リュックサックの使用頻度は増加傾向にあり,それにより発生する腰痛を未然に防ぐことは,筋骨格系疾患の予防,治療およびリハビリテーションを担う理学療法士にとって重要な使命である.したがって,本研究はリュックサックに由来する問題のメカニズムを明らかにする一助となると考える.
著者
前岡 浩 冷水 誠 庄本 康治 嶋田 智明
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.859-865, 2009 (Released:2010-01-28)
参考文献数
30
被引用文献数
1

〔目的〕本研究の目的は,電気刺激にて客観的に痛みの耐性を測定し,痛みの耐性と臨床的評価尺度における痛みの感覚的および情動的側面についての関連因子を検討することである。〔対象〕研究対象は健常学生30名とした。〔方法〕痛み耐性と知覚閾値の客観的測定にNeurometerを使用した。本研究では250 Hz,5 Hzの異なる周波数刺激を使用することでAδ線維,C線維の選択的興奮が得られるようにした。そして,測定項目は,最大電気刺激量である痛み耐性閾値(PTT値)および最小電流知覚閾値(CPT値),臨床的評価尺度には,Visual Analogue Scale(VAS)およびMcGill Pain Questionnaire(MPQ)を使用した。〔結果〕PTT値とMPQの痛みに対する不快感などを示す質的要素の項目を中心に相関が認められた。また,PTT値とVASおよびPTT値とCPT値に関連が認められず,VASとCPT値に相関が認められた。〔結語〕痛み耐性には情動的側面の関与が示され,持続的な強い痛みの評価では質的要素の影響がどの程度であるかを評価する必要性が示唆された。
著者
杉元 雅晴 日高 正巳 嶋田 智明
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.309-312, 2005-06-20
被引用文献数
1

褥瘡はリハビリテーション医療を遂行する上で, 大きな阻害因子となる。平成14年10月に「診療報酬改訂の対策の評価(褥瘡対策未実施減算)」という項目が組み込まれ, 褥瘡対策チームの設置が強調された。ところが, 褥瘡対策チームの構成に関する規定によれば, 専任医師1名と専任看護師1名の計2名が規定されている。ほかの職種に関する規定はないが, 薬剤師, 栄養士, 理学療法士, 作業療法士, ソーシャルワーカーなどの多くの医療関連職種が専門能力を発揮することにより, 有効なアプローチが可能になると考えられる。平成16年4月の改正で, 入院中1回のみ褥瘡管理加算(20点/入院)が新設されたが, 専任の医師または褥瘡看護に5年以上の経験を有する看護師により褥瘡診療計画書を作成し実施する。ここでも, 理学療法士が褥瘡治療にかかわる光景は認められない。褥瘡は急性の創傷などの皮膚損傷とは違って, 多くの発生要因が関与している慢性の皮膚疾患である。接触面から受ける圧
著者
前田 慶明 加藤 順一 東 祐二 糸谷 圭介 村上 雅仁 嶋田 智明
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.160-166, 2010
参考文献数
31

【目的】本研究の目的は,脳血管障害患者(CVA者)を対象に,非転倒者と転倒者の患者基本情報や入院時の下肢Br.stage,入院時FIM,Berg Balance Scale(BBS),Mini-Mental State Examination(MMSE)を用いて,転倒予測を判断するための判断基準について検討し,臨床現場に則した実践的な指標を確立することである。【対象】対象はCVA者53例(男性30例,女性23例,平均年齢67.0 ± 11.1歳)とした。【方法】入院時記録から,入院中の転倒有無,年齢,性別,病型,発症から入院までの期間,入院期間,麻痺側,入院時の下肢Br.stage,入院時FIM,MMSEを抽出し,また入院時にBBSを測定し,これらの患者特性と転倒との関連性を検討した。【結果】少なくとも1回転倒を経験したCVA者は19例,転倒者率は36%であった。非転倒群と転倒群の比較において年齢,入院期間,入院時FIM,入院時Br.stage,入院時BBS,MMSEに有意差を認めた。ロジスティック回帰分析の結果では,入院時BBSのオッズ比のみが有意であった。ROC曲線において有効なcut-off値は31点であると判断した。【結論】入院時のバランス能力がCVA者の転倒リスクと密接に関係しており,転倒予測を数値化することが可能となり,転倒予測する上でBBSが有用な指標である可能性が示唆された。
著者
アルカバズ ユセフ 嶋田 智明 小川 恵一 有馬 慶美
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.C4P2159, 2010

【目的】本研究の目的は,重さの異なるリュックサックを背負った際の,体幹姿勢と体幹・下肢の筋活動の変化について分析することである.この領域の先行研究においては,リュックサックを背負うことと腰痛の関連性が指摘されている.しかしながら,多くの研究が学童児を対象としたものであり,成人を対象としたものは少ない.そこで本研究においては成人におけるリュックサック負荷の影響を確認することとした.<BR><BR>【方法】対象は1 9名の健常男子大学生(平均年齢は21±3歳)であった.方法は,4つの異なる重量のリュックサックを負荷した立位で筋活動および姿勢を測定した.4つの立位肢位は,(1)リュックサックを背負わない立位,(2)被検者の体重の10%に相当するリュックサックを背負わせた立位,(3)15%のリュックサックを背負わせた立位および(4)20%のリュックサックを背負わせた立位であった.筋活動は両側の腹直筋,脊柱起立筋,内側広筋および大腿二頭筋を表面筋電計で記録した.一方,体幹姿勢はVICON250を用いて,矢状面,前額面および水平面で記録した.なお,データの記録は開始から10秒後の5秒間行った.また,疲労の影響を考慮しすべての測定の間に1分間の休憩を挿入した.得られたデータの統計処理はRepeated ANOVAを用い,有意水準を5%未満とした.<BR><BR>【説明と同意】対象者には,口頭および書面にて研究趣旨,方法および実験に伴うリスクについて説明し,書面にて同意を得た.<BR><BR>【結果】脊柱起立筋,内側広筋および大腿二頭筋の筋活動はリュックサック重量の変化に伴う増加率に差は生じなかった.一方,腹直筋の活動は,リュックサック重量の増加に伴い増加した(P<0.05).しかしながら,そのリュックサック重量の増加に伴う筋活動の増加率は直線でなく,負荷なしの立位肢位と体重の10%に相当するリュックサックを背負わせた立位肢位の間で最も高い増加率を示し,15%,20%では緩やかな増加率であった.一方,体幹姿勢の変化は,リュックサックを背負わない立位肢位を0°とした場合,体重の10%に相当するリュックサックを背負わせた立位肢位で3.37°伸展し,その後の15%,20%でもそれぞれ3.02°,3.90°とリュックサック重量の増加に伴う変化は確認されなかった.しかしながら,リュックサックを背負わない立位肢位と比較した場合,すべての重量で有意に伸展した(P<0.05).<BR><BR>【考察】リュックサックを背負わない場合と比較して,リュックサックを背負うことにより腹筋群の筋活動と体幹伸展角度が増加した.しかしながら,筋活動はリュックサック重量の増加に伴って増加したのに対して,伸展角度はリュックサックを負荷した際には増加したが,その角度はリュックサック重量に左右されなかった.これは,リュックサック重量が増加しても一定の姿勢を保つための身体の生理的反応と考えられる.この傾向は,体重の20%に相当するリュックサックを背負わせた際に最も顕著となったため,腰部へのリスクという観点から避けるべきであろう.しかしながら,今回の研究においては,リュックサックの使用頻度,使用時間,種類そして使用者の幅広い年齢層に関する因子については言及できないため,今後,それらの因子の影響について検討すべきである.<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】本研究は理学療法研究の中でも疾病および傷害予防に属するものである.近年,リュックサックの使用頻度は増加傾向にあり,それにより発生する腰痛を未然に防ぐことは,筋骨格系疾患の予防,治療およびリハビリテーションを担う理学療法士にとって重要な使命である.したがって,本研究はリュックサックに由来する問題のメカニズムを明らかにする一助となると考える.
著者
高取 克彦 岡田 洋平 梛野 浩司 徳久 謙太郎 生野 公貴 奥田 紗代子 鶴田 佳世 庄本 康治 嶋田 智明
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.52-58, 2007-04-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
33
被引用文献数
4

リハビリテーション専門病棟入院中の慢性期脳卒中片麻痺患者32例を対象に,Functional reach test(FRT)を応用した非麻痺側上肢の最大リーチ見積もり距離(Perceived reachability: PR)を評価し,実際のリーチ距離との誤差(以下,誤差距離)と入院期間中に生じた転倒回数との関係を調査した。PRはリーチ目標物が遠位から近位に接近する条件で評価し,誤差距離は実測値との差を絶対値で記録した。また両者の関連性を,他の要因を含めて検討するために,調査項目にはこの他,FIM移動項目点数,Functional reach距離(FR距離),下肢Brunnstrom's recovery stage,下肢感覚障害の程度,転倒恐怖心を含めた。解析は誤差距離と転倒回数との相関と,転倒の有無で分類した2群間の誤差距離とFR距離それぞれの比較,および上記評価項目の全てを含めた転倒関連因子の抽出とした。誤差距離と過去の転倒回数との関係にはピアソンの積率相関係数を用い,転倒関連因子の抽出には目的変数を転倒の有無に2項化したステップワイズ法でのロジスティック回帰分析を用いた。結果として,誤差距離と転倒回数には有意な相関が認められた。また転倒の有無を基準に2群化した場合,誤差距離は転倒群が有意に大きかった(p<0.01)。ロジスティック回帰分析の結果では,誤差距離,FIM移動項目点数,性別が転倒関連因子として採択された。回帰式を用いた判別分析による予測判別率は85%であり,転倒群の92%は6cm以上の誤差距離を有していた。以上のことから,片麻疹患者に対するFRTを応用したPR見積もり誤差の評価は,転倒ハイリスク患者を判別する簡便な評価法の1つとなる事が示唆された。
著者
高取 克彦 嶋田 智明
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部保健学科紀要 (ISSN:13413430)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.31-40, 2005

本研究の目的はビデオ映像を手がかりとしたMental Practice(MP)が、脳卒中患者の非麻痺側上肢課題遂行能力と麻痺側上肢機能に与える影響を調査することである。対象は脳卒中患者40例とし、MP群とコントロール群に無作為に振り分けた。課題は「座位にて、接近してくる水の入ったコップをできるだけ遠くで取る事」とし、MP群には課題動作を三人称的および一人称的視点で撮影したビデオ映像を見せ、コントロール群には同時間の休息のみとした。また、麻痺側上肢機能への学習効果を検証するためにMP群の1例には上記介入を4週間実施した。非麻痺側機能評価は座位でのFunctional Reach距離(S-FRD)の変化、視覚的判断による課題遂行能力と実行との整合性とした。麻痺側上肢機能は簡易上肢機能検査(STEF)の合計点数とペグボード遂行時間の変化で評価した。結果として、S-FRD変化は介入法と時間経過(介入前後)の2要因に交互作用が認められた(F=7.69,p<0.01)。4週間の介入を行った症例では介入後、STEF合計点数およびペグボード遂行時間共に改善が認められた。
著者
渡辺 和子 細野 喜美子 嶋田 智明 吉田 正樹 佐藤 英一 新田 麗子 細野 喜美子 渡辺 和子
出版者
神戸大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1985

看護における移動技術の巧拙は看護者の体のテコのバランスの用い方と密接に関連しているが, 患者及び看護者の重心移動に関するより詳細なバイオメカニクス的研究は未だない. 重量負担の大きい患者の移動動作の効率的な介助方式の開発は, 老人人口が増加する今日の重要な課題である. 従って, 我々は日常用いられている看護者の移動技術を取り上げ熟達者と未熟者達の技術の差及び患者の受ける負担を力学的・生理学的に解明することを目的とした. 全介助の必要な患者を仰臥位から起坐位にする場合の技術の効率性を検討するために次のような実験を行った.1.熟練者の技術の特長から指導ポイントを取り出し, これを用いて未熟練者の指導前後の関節角度の変化を分析し, 指導ポイントの要因について考察し知見を引き出した.2.熟練者の移動動作における筋活動の発生順序の分析の結果, 動作初期の腓腹筋と大腿四頭筋・左上腕三頭筋・左上腕二頭筋の活動の様相に特徴が見られた.3.未熟練者の左右の腰背筋の筋電図と関節角度の変化を指導前後に測定した. 指導前に腰背筋は最大収縮力を使っているが, 指導後は低い筋活動で患者の移動を成功している. これにより指導ポイントがより明らかになった.4.熟練者から取り出した指導ポイントを用いて, 未熟練者14名の指導前後の筋電図の比較検討を行った. その結果, 指導によって動作はリズミカルになり, 筋活動も効率的となることが明らかになった.5.全介助の必要な患者をベッド上で仰臥位から坐位にする際, ベッドの高さに対して介助者の身体的負担への影響を検討した. その結果介助者の身体疲労・疼痛の程度は身長の50%のベッドの高さで最も少なかった.