著者
山本 圭彦 浦辺 幸夫 前田 慶明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1211, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】静的ストレッチング後に,筋力発揮が低下することは知られている。これは,神経筋の生理的反応とされている(Marek SM, 2005)。ストレッチング後に筋収縮を加えることで,筋力低下が解消できると考えた。本研究は,ストレッチング後に筋収縮を伴う抵抗運動を行わせ,筋力がどのように変化するかを検討した。仮説は,ストレッチング後に筋収縮を加えることで筋力低下が解消するとした。【方法】対象は,健康な男性15名(平均年齢:20.9±1.5歳,身長:169.9±7.1 cm,体重:68.4±7.4 kg)であり,ハムストリングを対象筋とした。一側の下肢を安静肢,他側の下肢をエクササイズ肢(以下,Ex肢)に分けた。なお,安静肢とEx肢の測定は1日あけた。筋力測定は,等速性筋力測定器(Biodex system3,BIODEX社製)を用いて300°/s,180°/s,90°/sの3種類の角速度で計測した。ストレッチングの方法は,背臥位で股関節屈曲90°,膝関節屈曲90°から検査者が膝関節を他動的に伸展させた。最大膝関節伸展可動域を1分間保持するストレッチングを2セット実施した。測定手順は,両肢ともにストレッチング前とストレッチング直後に筋力を計測した。その後,安静肢は5分間の安静,Ex肢は5分間のエクササイズを実施した後にストレッチング5分後の筋力測定を行った。エクササイズは,等速性筋力測定器にて角速度120°/sでの膝関節屈伸運動を5回3セット実施し,セット間は1分間の休息を入れた。統計学的解析は,測定時期(ストレッチング前,直後,5分後)と2条件(安静肢,Ex肢)を2要因とした反復測定二元配置分散分析を用いて検討し,有意な効果が得られた場合には,FisherのPLSD法による多重比較を行った。いずれも危険率5%未満を有意とした。【結果】ストレッチング直後はストレッチング前と比べ安静肢,Ex肢ともにすべての角速度で7.4~11.2%筋力が低下した(p<0.05)。安静肢はストレッチング5分後も筋力低下(4.8~8.9%,p<0.05)が持続したが,Ex.肢は有意な減少を認めずストレッチング後の筋力低下は解消した。【結論】ストレッチングによる低下筋力は,筋収縮を加えることで即時的に解消することが確認できた。静的ストレッチングは筋力低下をもたらすため,スポーツ現場ではウォーミングアップに静的ストレッチングを取り入れることは考慮すべきという意見がある。しかし,今回の結果から静的ストレッチング後に筋収縮を加えれば筋力低下に対する問題は解決できることが分かった。成長期には,柔軟性を改善することが成長期障がいの予防につながるため,ウォーミングアップ時に静的ストレッチングの励行は有効であると考える。
著者
田城 翼 浦辺 幸夫 内山 康明 山下 大地 前田 慶明 笹代 純平 吉田 遊子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.935-940, 2018 (Released:2018-12-21)
参考文献数
21

〔目的〕大殿筋および股関節外旋筋群への静的ストレッチングがしゃがみこみ動作に及ぼす影響を検証した. 〔対象と方法〕対象はしゃがみこみ動作が不可能な健常大学生26名として,大殿筋のストレッチングをする群(SGM群)13名と,股関節外旋筋群のストレッチングをする群(SER 群)13名に分けた.セルフストレッチングを各群で1週間実施し,しゃがみこみ動作時の股関節屈曲角度,安静時股関節屈曲角度,指床間距離,椎体間距離を測定した. 〔結果〕介入後,しゃがみこみ動作が可能となった者はSGM群3名,SER群9名であった.SER群は,SGM群と比較して, しゃがみこみ動作時の股関節屈曲角度が有意に増加した.〔結語〕SERは, SGMに比べてしゃがみこみ動作の獲得に効果が期待できることが示された.
著者
大島 祥央 浦辺 幸夫 前田 慶明 河原 大陸
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.199-202, 2016 (Released:2016-04-29)
参考文献数
13
被引用文献数
1

〔目的〕林業従事者の転倒災害防止の一助とするためにチェンソーの駆動が立位バランス能力におよぼす影響を検討することとした.〔対象〕健常成人男性12名とした.〔方法〕安静時とチェンソー把持直後,5分後,10分後の静的・動的立位バランス能力(足圧中心の単位軌跡長,外周面積,重心前方移動距離)を平衡機能計で測定した.チェンソーの把持はエンジンを駆動しない非駆動条件と,エンジンを駆動する駆動条件に分けた.〔結果〕足圧中心の単位軌跡長と外周面積は,チェンソー把持前後で両条件とも有意な変化はなかった.重心前方移動距離は,駆動条件のみ安静時と比較してチェンソー把持直後,5分後でそれぞれ有意に低下した.〔結語〕本研究は,チェンソーを駆動させることで,即時的に立位バランス能力が低下する可能性が示唆された.
著者
尾上 仁志 前田 慶明 田城 翼 福井 一輝 島 俊也 仁井谷 学 浦辺 幸夫
出版者
公益社団法人 広島県理学療法士会
雑誌
理学療法の臨床と研究 (ISSN:1880070X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.15-19, 2022-09-30 (Released:2022-10-01)

【目的】脊椎圧迫骨折後の腰部多裂筋の筋断面積を各腰椎レベルで比較し、脊柱後弯変形の予防の一助とすること。 【方法】対象は、圧迫骨折群6名と非圧迫骨折群6名であった。各腰椎レベルの腰部多裂筋の筋断面積を測定するために、超音波画像診断装置を使用した。また、徒手筋力計を用いて、等尺性体幹伸展筋力を測定した。統計学的解析には、各腰椎レベルの腰部多裂筋の筋断面積および、等尺性体幹伸展筋力を2群間で比較するために、対応のないt検定を使用した。有意水準は5%とした。 【結果】L1とL2での各腰椎レベルの腰部多裂筋の筋断面積は、両群で有意な差はなかった。L3からL5では、圧迫骨折群で有意に小さかった(p<0.05)。等尺性体幹伸展筋力は、両群で差はなかった。 【結論】本研究の結果から、脊椎圧迫骨折の有無で等尺性体幹伸展筋力に差は認めないが、脊椎圧迫骨折群は、L3からL5の腰部多裂筋が小さいことが示された。
著者
前田 慶明
出版者
公益社団法人 広島県理学療法士会
雑誌
理学療法の臨床と研究 (ISSN:1880070X)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.11-16, 2016-03-31 (Released:2018-02-16)

近年、義足部品は目覚ましく発展している一方で、下肢切断者に対する理学療法は十分に提供できていないのが現状である。下肢切断者を実際に担当する機会は少ないように感じる。また、 理学療法を進めていくうえで義足やソケットの知識は必須であるが、切断者に関わることが少ないと勉強する機会も必然的に少なくなる。切断者が義足を装着して歩行練習などを実施していく中で医師や看護師はもちろんではあるが、義肢装具士との連携は重要である。本稿は理学療法士が切断者を担当した際に、どのように進めてよいか迷った時に役立つように作成した。詳しくは、切断者の術前からの関わりや術後早期の理学療法、義足を装着した初期の練習方法、日常生活での実用的な義足歩行を獲得するための練習、そして在宅での生活動作練習の実践方法と義足部品の活用など写真を含めて説明する。また、最後に下肢切断者とスポーツについても述べたい。
著者
事柴 壮武 浦辺 幸夫 前田 慶明 篠原 博 笹代 純平 藤井 絵里 森山 信彰
出版者
公益社団法人 広島県理学療法士会
雑誌
理学療法の臨床と研究 (ISSN:1880070X)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.21-24, 2013-03-31 (Released:2015-03-03)
参考文献数
11
被引用文献数
2

「目的」 大腿四頭筋セッティング(Quadriceps femoris muscle Setting:以下QS)は関節運動を伴わないため,下肢整形外科疾患に術後早期から実施できる。QS では大腿四頭筋のみでなく,ハムストリングや大殿筋,中殿筋も筋活動を発揮するため,股関節の角度が変化すると各筋の筋活動量や発揮される筋力が変化すると推測される。本研究ではQS 時の下肢筋筋活動が,体幹固定性,股関節角度の違いによりどのように変化するかを明らかにすることを目的とした。「方法」対象は下肢に既往がない成人男性9 名とした。対象は右側下肢膝窩部に下肢筋力測定・訓練器を設置した。リクライニングベッドを用いて股関節の屈曲角度を背面支持のある15°,65°,背面支持のない115°の肢位となるように設定し,両上肢を胸の前で組ませた。上記の股関節屈曲角度で5秒間の最大努力によるQSを各々2回行い,膝窩部が下肢筋力測定・訓練器を押し付ける力をセッティング力としその平均値を求めた。同時に右側の大腿直筋,内側広筋,外側広筋,半膜様筋,大腿二頭筋,大殿筋の筋活動を導出し,記録した。波形の安定した1秒間の積分値を各筋の最大随意収縮時の値で正規化し%MVCとして算出した。「結果」セッティング力は,15°で15.4±4.3N,65°で19.3±4.3N,115°で12.0±3.2Nとなり,背面支持のある65°が他の条件よりも有意に高い値を示した(p<0.05)。内側広筋と外側広筋の筋活動は背面支持のある65°が背面支持のない115°よりも有意に高い値を示した(p<0.05)。大腿直筋,大腿二頭筋,半膜様筋,大殿筋では有意な差は認められなかった。「結論」QSを行う際,股関節の屈曲角度を上記の3条件で比較した場合,背面支持のある65°の肢位の際にセッティング力や内側広筋,外側広筋の筋活動が高まることが示された。本研究の結果から,内側広筋と外側広筋の筋力増強練習は背面支持のある15°や65°の肢位にて行うことが有効かもしれない。今後はより詳細な角度での調査が必要であると考える。
著者
金田 和輝 前田 慶明 鈴木 雄太 寺田 大輝 小宮 諒 浦辺 幸夫
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.117-123, 2022-10-31 (Released:2022-11-19)
参考文献数
20

本研究は,緊急事態宣言発令による生活環境の変化が,健常水泳選手とパラ水泳選手の生活範囲と精神的健康に与えた影響を検討することを目的とした.緊急事態宣言発令中と解除後にアンケート調査を行い,生活範囲と精神的健康の変化を確認した.生活範囲は全対象者で解除後に増加し,精神的健康は女性パラ水泳選手のみ有意に低値を示した.女性パラ水泳選手では,生活環境の変化により精神的健康が変化しやすい可能性がある.
著者
水田 良実 前田 慶明 小宮 諒 田城 翼 堤 省吾 安部倉 健 黒田 彩世 江崎 ひなた 浦辺 幸夫
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.111-116, 2022-10-31 (Released:2022-11-19)
参考文献数
16

本研究の目的は,感染症流行による部活動自粛後に発生した傷害を調査し,傷害と受傷した選手の特徴を探ることであった.部活動に所属する選手を対象に,自粛後半年間の傷害発生の有無,自粛中と自粛後の練習時間等をアンケートで調査し,自粛後の受傷群と未受傷群の2群に分類して各項目を群間比較した.回答者は148名で傷害発生数は52件であった.自粛中と自粛後の練習時間の差は受傷群で有意に大きかった(p<0.05).
著者
松浦 由生子 浦辺 幸夫 前田 慶明 藤井 絵里 芝 俊紀 國田 泰弘 河野 愛史
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100356, 2013

【はじめに、目的】 ストリームライン姿勢(streamline;SL)とは、競泳競技においてスタートやターン後に水の抵抗をできるだけ軽減するために水中で水平に近い状態をとる姿勢で、泳速度に重要な影響を及ぼしている。さらに、SL時の過度な腰椎前彎が腰部障害の原因になると報告されており(松本、1992)、腰椎の前彎が小さいSLをとることは競技力向上だけでなく、障害予防の面においても重要であると考えられる。現場では立位でSLを評価することが多く、先行研究においても、立位と水中SLの腰椎前彎角(以下、腰椎角)の関係は示されているが、水中姿勢と類似した陸上での腹臥位SLと水中SLとの関係を示した研究はない。本研究では、合屋ら(2008)の報告を参考に、水中SLの評価指標となるけのび到達距離(以下、けのび距離)を用い、立位、腹臥位SL時の腰椎角がけのび距離に及ぼす影響を明確にすることを目的とした。仮説は、けのび距離が長い選手は、立位SLおよび腹臥位SLで腰椎角が小さいとした。【方法】 対象は現在腰部に整形外科疾患のない3年以上の水泳経験者27名(男性15名:21.1±1.7歳、女性12名:20.5±1.0歳)とした。脊柱計測分析器Spinal Mouse(Index社)を用いて安静立位、立位SL、安静腹臥位、腹臥位SLの計4姿勢における矢状面の脊柱アライメントを3回ずつ測定し、平均値を求めた。Th12~S1の椎体角度の総和を腰椎角とした。水中SLの評価として、壁を蹴りSLを保持し続けるけのび距離を用いた。けのび距離は、プールの壁からけのび動作で止まった時点の頭頂の位置とし、3回測定し平均値を求め、結果から身長を引くことで統一した。統計学的解析には、SPSS Ver.20.0 for Windows(IBM社)を用い、立位SL、腹臥位SLでの腰椎角とけのび距離との相関をPearsonの相関係数により男女別に分析した。また、けのび距離が全対象の平均値よりも長いL群(男性6名、女性6名)と短いS群(男性9名、女性6名)に分け、各群で男女別に安静とSLの比較を対応のあるt検定を用いて行った。さらに、4姿勢でのL群とS群の比較を対応のないt検定を用いて行った。危険率5%未満を有意とした。【倫理的配慮、説明と同意】 全対象に本研究の趣旨を十分に説明し、書面にて同意を得た。なお、本研究は広島大学大学院保健学研究科心身機能生活制御科学講座倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号1232)。【結果】 けのび距離は男性で8.8±2.0m、女性で9.7±1.5mであった。腰椎角とけのび距離との間には、腹臥位SLで男女ともに有意な負の相関を認めた(男性r=-0.69、p<0.01、女性r=-0.82、p<0.01)。立位SLでは女性のみ有意な負の相関を認めた(r=-0.61、 p<0.05)。けのび距離で2群に分けた結果、L群のけのび距離は男性で11.0±1.2m、女性で10.8±0.7mとなり、S群は男性で7.6m±1.0m、女性で8.2±0.6mとなった。腹臥位での腰椎角は安静、SLの順に男性L群が20.2±10.0°、19.5±9.3°、S群23.9±7.0°、29.9±4.2°、女性L群が29.8±7.8°、33.0±8.0°、S群38.5±7.6°、44.5±5.4°となり、男女ともS群のみSL時に有意な増加を認めた(男性<0.05、女性<0.01)。また、腹臥位SL時の腰椎角はL群がS群と比較し有意に小さかった(男性p<0.05、女性p<0.01)。立位では群内、群間ともに有意差を認めなかった。【考察】 本研究より陸上でのSLの腰椎角がけのび距離に影響を及ぼし、特に腹臥位SLで腰椎角が小さい選手は、けのび距離が延長する傾向にあることが示唆された。腹臥位は水中SLと脊柱に加わる重力方向が等しく、立位と比較し、より水中での姿勢が反映されやすかったと考えられる。先行研究では、一流選手ほど立位、水中SLともに腰椎前彎が小さく、水中でも陸上と同等の角度を保つことができる一方で、一般の選手は立位と比較し水中SLで腰椎角が増強すると報告されている(金岡ら、2007)。本研究においてもけのび距離が延長した選手は腹臥位SL時の腰椎角が小さく、水中でも小さな腰椎角を保つことで、抵抗の少ないSL保持が可能であったと考えられる。【理学療法学研究としての意義】 本研究では、特に腹臥位SLの腰椎角がけのび距離に影響を及ぼすという新しい知見が得られた。これまでの研究や現場の評価では立位SLが水中SLの指標となることが多かったが、本研究から腹臥位でSL評価を行うことの意義が示された。また、SL時の過度な腰椎前彎が腰部障害の原因とされることから、SL時に小さな腰椎角を保持できることは、競技力向上のみならず、障害予防にもつながると考える。
著者
堤 省吾 浦辺 幸夫 前田 慶明
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.219-225, 2018-06-01 (Released:2018-05-16)
参考文献数
29

The aim of this study was to evaluate the transition of the tensor fasciae latae (TFL) and the iliotibial band (ITB) hardness after repetitive hip abduction exercise (RE) and the effect of vibration stimulation immediately after RE. Nine healthy man performed the RE (20 reps×5 sets) and the TFL and the ITB hardness were measured before and after RE. Participants were performed RE by 2 conditions(i.e. with and without vibration stimulation after RE). The results showed that with no vibration condition, hardness of the TFL significantly increased immediately, 15 min, 30 min, and 24 hours and the ITB significantly increased immediately, and 24 hours after RE compared with before RE, respectively. With vibration condition, vibration after RE, both of the TFL and the ITB hardness significantly increased only immediately after compared with before RE. On the other hand, TFL and ITB hardness significantly decreased 15 min, 30 min, and 24 hours compared with immediately after RE. In addition, with vibration condition, TFL and ITB hardness significantly decreased 15 min, 30 min, 24 hours compared with no vibration condition, respectively. This study indicated that the ITB hardness might be increased with excessive activity of TFL, and the vibration stimulation immediately after exercise is effective for decreasing the hardness.
著者
木下 恵美 浦辺 幸夫 前田 慶明 藤井 絵里 笹代 純平 岩田 昌 河原 大陸 沼野 崇平
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.227-231, 2016 (Released:2016-04-29)
参考文献数
15
被引用文献数
2

〔目的〕本研究の目的は,片脚着地動作時の前・後足部運動と膝関節外反運動の関係を明らかにすることである.〔対象〕対象は健常成人女性13名とした.〔方法〕課題動作は高さ30 cm台からの非利き脚での片脚着地動作とし,台より30cm前方に着地させ,片脚立位を保持させた.課題動作中の膝関節外反角度,前足部回内角度,後足部外反角度,アーチ高を算出し,膝関節外反角度と各足部角度,アーチ高との相関関係を調べた.〔結果〕片脚着地動作時の前足部回内運動と膝関節外反運動に有意な相関関係は認められなかった.一方,後足部外反運動と膝関節外反運動には有意な正の相関が認められた.〔結語〕片脚着地動作での膝関節外反運動を予防するためには,後足部外反運動を少なくすることが重要であることが示唆された.
著者
堤 省吾 浦辺 幸夫 前田 慶明 藤井 絵里 森山 信彰 岩田 昌
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1329, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】腸脛靭帯(ITB)は大腿筋膜張筋(TFL)と大殿筋の一部を起始とし,ガーディー結節に付着する筋膜様組織である。腸脛靭帯炎はランニングやサイクリングなどの同じ動作を反復するようなスポーツに多く,ITBと大腿骨外側上顆間に生じる摩擦の繰り返しが原因である。またITBの緊張の高さは,腸脛靭帯炎発症のリスクファクターであることが報告されている。ITBは主にTFLの収縮に伴い張力が変化するため,予防や治療にはTFLのストレッチングが行われる。しかしTFLのストレッチングによってITBの柔軟性がどの程度向上するかは不明である。本研究の目的は,柔軟性の評価のひとつである硬度を指標とし,TFLのストレッチングがITBに与える影響を定量化することとした。仮説は,ITBの硬度はストレッチング後に低下するとした。【方法】対象は下肢に整形外科的疾患の既往がない健常成人男性7名(年齢23.1±1.3歳,身長171.2±7.1 cm,体重62.6±9.5 kg)の利き脚とした。ストレッチング肢位は,検査側下肢が上方の側臥位で膝関節90°屈曲位とした。骨盤の代償運動を抑制するため,非検査側の股関節は屈曲位とした。検者が徒手的に検査側下肢を股関節伸展し,大腿遠位外側部に押し当てた徒手筋力計μTas F-1(ANIMA社)の値が50-70Nの間となるように内転方向へ伸張した。ストレッチング前後のITBの硬度測定には,筋(軟部組織)硬度計TDM-Z1(TRY-ALL社)を使用した。再現性の高さについては既に報告されている(ICC=0.89以上)。測定は硬度計の取り扱いに習熟した検者1名が行った。測定肢位は,検査側下肢が上方の側臥位で,股関節屈伸・内外転・回旋0°,膝関節屈曲90°とした。測定部位は,大腿骨外側上顆から大腿長の5%,25%,50%近位の3箇所とし,下肢を脱力させた状態で5回測定し,平均値を算出した。統計学的分析にはSPSS 20.0 for windowsを使用した。対応のあるt検定を用い,ストレッチング前後の各部位の硬度を比較した。危険率5%未満を有意とした。【結果】ITBの硬度(N)は,ストレッチング前,後それぞれ5%で1.39±0.1,1.25±0.14,25%で1.24±0.08,1.15±0.13,50%で1.08±0.13,1.01±0.13となり,ストレッチング後に各部位で有意な低下がみられた(p<0.05)。【結論】本研究では硬度計を使用し,ストレッチング前後におけるITBの硬度の定量化を試みた。結果,ITBの硬度は遠位になるほど高い傾向があったが,全ての部位でTFLのストレッチングにより有意に低下した。客観性に乏しく表現されることが多い硬度を定量化し,比較指標とすることは臨床的に意義がある。今後は,腸脛靭帯炎の発症部位である大腿骨外側上顆付近のITBにより効果のあるストレッチング法を模索し,硬度変化を検討していく。また硬度計の他に超音波測定装置を併用することで,組織の評価をより客観的に行い,腸脛靭帯炎の予防や治療に最適なストレッチング法構築の一助としたい。
著者
前田 慶明 浦辺 幸夫 藤井 絵里 森山 信彰 岩田 昌 堤 省吾 沼野 崇平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】近年,全身振動刺激(Whole Body Vibration:WBV)の効果は下肢筋力の増強のみならず,成長ホルモンの上昇や骨代謝および骨密度の増加が報告されている。しかしながら,WBVを併用したトレーニングが体幹筋力や動的バランスに与える効果を示した報告は渉猟し得た限りでは見当たらない。本研究の目的は健常男性を対象に,WBVを併用したトレーニング(WBV群)を8週間実施し,WBVを使用しない群(非WBV群)に比べて体幹筋力や動的バランスに相違があるかを明らかにすることである。仮説は非WBV群に比べて,WBV群の方が体幹筋力や動的バランスが向上するとした。【方法】対象は健常男性20名(年齢26.5±4.7歳,身長170.0±5.3 cm,体重63.9±7.1 kg)とし,無作為にWBV群(10名)と非WBV群(10群)に群分けした。なお,研究デザインは無作為化比較試験とし,3回/週で8週間の介入を各群で実施した。トレーニングのプロトコールは1セット6項目で構成された体幹筋トレーニングを以下の順序で実施した。種目は左右サイドブリッジ,プランク,シットアップ,左右ツイストを各30秒間ずつ実施し,各項目間には30秒間の休憩を挟んだ。介入前後でのトレーニング効果を判定する指標は,体幹屈曲・伸展の最大等尺性筋力,スクワットジャンプとカウンタームーブメントジャンプの跳躍高,動的バランス指標の一つである下肢最大リーチ距離を測定するY Balance Test(前方,後外方,後内方),機能的な動きを評価するためのスクリーニングテストであるFunctional Movement Screen(FMS)を測定した。統計解析には二元配置分散分析を行い,その後に多重比較にはBonferroni法を用いた。統計学的解析は統計ソフトウェアSPSS Ver. 21.0 for Windows(IBM社)を使用した。有意水準は5%未満とした。【結果】WBV群の平均体幹屈曲筋力は8週間後に34%増加し,有意な交互作用を示した(F=6.79,p<0.01)。Y Balance Testの前方リーチ距離は17%増加し,介入効果を示す有意な相互作用を示した(F=11.00,p<0.01)。その他の項目では有意な差を認めなかった。【結論】本研究はWBVを併用した群と併用しない群でトレーニングを8週間実施し,体幹筋力や動的バランスに効果に相違があるかを検討した。その結果,WBV群が非WBVに比べて有意に体幹筋力や動的バランスが向上した。全身振動が不随意的かつ持続的に筋収縮を促し,それを継続的に実施した結果,体幹筋力や動的バランスをより効果的に向上させたと考える。この結果は理学療法やスポーツ現場で行うトレーニング方法として有用な情報であり,理学療法研究として意義があると考える。本研究では介入後フォローアップを実施しておらず,今後は長期的な介入効果を検証する必要がある。
著者
北村 郁海 浦辺 幸夫 前田 慶明 藤井 絵里
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.387-390, 2017 (Released:2017-06-23)
参考文献数
15

〔目的〕本研究は踵接地時に足関節背屈を意識させたランニングでの下肢筋活動および関節角度の変化を測定し,アキレス腱障がいのリスクを軽減するための一助とすることを目的とした.〔対象と方法〕対象は大学陸上長距離選手7名とし,トレッドミル上で通常のランニングと足関節背屈を意識したランニングを行った.〔結果〕背屈を意識したランニングでは,踵接地時に床と足底のなす角度が増加し,立脚前期での足関節背屈角速度の最大値が減少した.筋活動は,踵接地前の前脛骨筋,立脚前期の大腿直筋で増加を認めた.〔結語〕背屈を意識したランニングでは,接地時の衝撃吸収に足関節底屈筋群以外の筋がより貢献したと予想され,アキレス腱への負担が小さくなると思われた.
著者
安部倉 健 吉見 光浩 堤 省吾 土田 晃貴 小宮 諒 前田 慶明 浦辺 幸夫
出版者
公益社団法人 広島県理学療法士会
雑誌
理学療法の臨床と研究 (ISSN:1880070X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.20-25, 2022-09-30 (Released:2022-10-01)

【目的】超音波画像診断装置を用いて、棘下筋トレーニング終了後の棘下筋筋厚の経時的変化を明らかにすること。 【方法】14名の健常成人男性を対象とした。棘下筋トレーニング前と、トレーニング終了直後から60分後までの棘下筋筋厚を10分ごとに測定した。トレーニング内容は、重錘2.0 kgを用いて側臥位で肩関節外旋運動をオールアウトまで反復するものを1セットとして、3セット実施するものとした。統計学的解析には、各時点での棘下筋筋厚について反復測定分散分析を行い、事後検定としてDunnettの検定を実施した。有意水準は5%とした。 【結果】トレーニング前と比較して棘下筋筋厚は終了直後に平均3.0 mm増加し、終了40分後まで有意に高値を示し(p<0.05)、50分で差がなくなった。終了後の棘下筋筋厚は、時間経過に伴い減少した。 【結論】運動直後の棘下筋に生じる筋厚増大はトレーニング直後に最大となり、その後は減少を続け、50分以内に消失する一時的な現象であった。
著者
鈴木 雄太 浦辺 幸夫 前田 慶明 笹代 純平 森田 美穂
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.209-212, 2016 (Released:2016-04-29)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

〔目的〕競泳選手と非競泳選手の上肢挙上時の脊柱アライメントの変化の違いを探るため,立位とストリームライン(以下,SL)での脊柱アライメントを比較した.〔対象〕競泳群26名,非競泳群20名とした.〔方法〕Spinal Mouse®を用いて立位とSL立位の胸椎,腰椎および骨盤のアライメントの変化量,SL立位での上肢挙上角度を測定した.〔結果〕競泳群では上肢挙上角度が大きな対象ほど,胸椎の後弯,腰椎の前弯,骨盤の前傾が小さかった.非競泳群では,いずれの変化量も上肢挙上角度と有意な相関は認められなかった.〔結語〕上肢挙上角度が大きい競泳選手は胸椎の伸展運動によって腰椎前弯と骨盤前傾を小さくすることが可能であることが示された.
著者
田城 翼 浦辺 幸夫 鈴木 雄太 酒井 章吾 小宮 諒 笹代 純平 前田 慶明
出版者
公益社団法人 広島県理学療法士会
雑誌
理学療法の臨床と研究 (ISSN:1880070X)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.83-87, 2020-03-31 (Released:2020-08-21)

目的:足関節捻挫を受傷した選手は、医療機関で受療せずに競技復帰する場合が多く、「たかが捻挫」と足関節捻挫を軽視している可能性がある。本研究では選手が足関節捻挫受傷後の治療の重要性をどのように捉えているかを調査した。 方法:大学男子サッカー選手235名を対象として、インターネットによるアンケート調査を実施した。 結果:90名(38%)の有効回答のうち、70名(78%)が足関節捻挫を経験していた。受傷後、医療機関を受診した者は37名(53%)で、そのうち28名(76%)は継続的に通院し、治療を受けていた。医療機関を受診しなかった、または通院を中止した理由は、「治療しなくても治ると思ったから」という回答がそれぞれ最多であった。 結論:治療しなくても治ると思っていた選手は、足関節捻挫受傷後の治療の重要性を認識できていない可能性がある。このような選手に対して、足関節捻挫の治療の啓蒙が不可欠である。
著者
森山 信彰 浦辺 幸夫 前田 慶明 寺花 史朗 石井 良昌 芥川 孝志
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】筆者らは理学療法士を中心としたグループで,中四国学生アメリカンフットボール連盟秋季リーグ戦の全試合に帯同し,メディカルサポートを行ってきた。本研究では,外傷発生状況の分析を行い,今後の安全対策の充実に向けた提言につなげたい。【方法】2012年度から2015年度の試合中に生じた全外傷を集計した。外傷発生状況は,日本アメリカンフットボール協会の外傷報告書の形式を用いて記録した。分析項目は外傷の発生時の状況,部位,種類,発生時間帯とした。【結果】本研究の調査期間にリーグ戦に参加したのは7校であり,登録選手数は延べ686名(2012年161名,2013年152名,2014年185名,2015年188名)であった。リーグ戦の開催時期は毎回8月下旬~11月上旬であった。調査対象試合数は57試合であった。調査期間中の外傷の総発生件数は249件(2012年72件,2013年60件,2014年52件,2015年65件)であり,1試合平均の外傷発生件数は4.4件(2012年4.8件,2013年4.3件,2014年3.5件,2015年5.0件)であった。4年間で外傷発生件数には大きな変化がなく推移した。外傷発生時の状況は「タックルされた時」が67件(27%)で最も多く,次いで「タックルした時」が59件(24%),「ブロックされた時」が39件(16%)の順であった。部位は,下腿が70件(28%)で最も多く,以下膝関節が27件(11%),腹部が20件(8%)の順であった。種類は打撲が87件(35%)で最も多く,以下筋痙攣が74件(30%),靭帯損傷が35件(14%)の順であった。時期は,第4クォーターが97件(39%)と最も多かった。【結論】関東地区の大学リーグ戦中に発生した1試合平均外傷発生件数は1.3件で,外傷の38%が靭帯損傷であり,次いで打撲が17%という報告がある(藤谷ら 2012)。本リーグ戦では,1試合平均外傷発生件数が4.4件と,先行研究の3.4倍となり明らかに多くなっている。また,外傷の種類別では,靭帯損傷の発生件数が少ないが,それに代わって打撲の発生が多いことが特徴であろう。打撲については,相手の下半身を狙うような低い姿勢のタックル動作を受ける際に主に大腿部や腹部に強いコンタクトを受けたケースで多く発生していた。近年,米国では「Heads up football」と称した,タックル動作に関する組織的な啓発活動が行われており,理想的なタックル動作として相手の上半身へコンタクトすることを推奨している。わが国においても最近の安全対策への見解を取り入れ,タックル動作を安全に行うための指導を継続して行っていくことが今後重要であると考える。一方で,本研究の解析期間中には,頸髄損傷などで後遺障がいを認めるような重大外傷は発生しなかった。これは,筆者らがリーグ戦への帯同に加えて,オフシーズンに講習会を実施し,安全な動作指導を行っていることが奏功したと考えられる。重大外傷の予防のために,この事業の継続が必要と考えている。
著者
小笠原 沙映 浦辺 幸夫 前田 慶明 沼野 崇平 藤下 裕文 福井 一輝
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>足関節内反捻挫は発生頻度の高いスポーツ外傷であり,予防のためにテーピングが行われている。テーピングは,テープの走行や本数を変化させることで,関節の制動効果を高めている。テープの走行の違いにより,関節運動への影響が変化するが,1本のテープが関節運動にどのように制限を与えているかは明らかではない。本研究の目的は,後足部の内反制限のため,走行が異なる3種類のテープを施行し,サイドステップ動作時に,テープがどのように関節運動を制限しているのかを明らかにすることとした。</p><p></p><p>仮説は,距骨下関節軸に直交するテープの走行が後足部の内反制限に最も効果的であるとした。</p><p></p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象は,足関節捻挫の既往のない健常な女性8名(年齢21.4±0.5歳,身長157.3±5.6 cm,体重49.4±5.5 kg)とした。テープは日東メディカル社のEB-50を使用した。テープは対象の利き脚(ボールを蹴る脚)に,内果から足底を横切り,下腿遠位1/3まで貼付した。テープの張力を一定にするため,テープを徒手筋力計(アニマ社)のプローブに当てた状態で張力を加え,40 Nになった時点で貼付した。課題動作は,利き脚側の側方1 mへのサイドステップとした。課題動作の分析には,赤外線カメラ16台からなる三次元動作解析装置(Vicon Motion Systems社)を使用し,サンプリング周波数100Hzで記録した。赤外線反射マーカーをOxford foot modelに基づき下肢30箇所に貼付した。測定条件は,①テープなし,②足底面に垂直で,テープの後縁が外果の最突出部を通る走行のテープ,③足底面に垂直で,テープの前縁が外果の最突出部を通る走行のテープ,④足底面に対して後方に傾き,テープの後縁が外果の最突出部を通る(距骨下関節軸に直交する)走行のテープの4条件で行った。動作解析ソフトVicon Nexus1.8.5(Vicon Motion Systems社)を用いて,着地時の後足部内反角度とその後の最大内反角度を算出した。4条件間の比較には,Wilcoxon符号付順位和検定を用い,危険率5%未満を有意とした。</p><p></p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>足部接地時の後足部内反角度(平均±SD)は,①16.0±5.2°,②14.0±7.7°,③14.4±7.8°,④13.1±10.0°となり,④は①と比較して有意に低値となった(p<0.05)。最大後足部内反角度は,①19.5±5.7°,②18.8±8.9°,③17.1±8.2°,④16.0±9.2°となり,各条件間で有意差はなかったが,④が最も低値となった。</p><p></p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>サイドステップ時の後足部内反角度は,④が最も低値を示したことから,距骨下関節軸に直交した走行が後足部の内反制限に与える影響が大きく,仮説を支持する結果となった。さらに,②のように外果の前方を通るテープ,③のように外果の後方を通るテープでも,足底面に対して垂直に走行するため,一定の効果を示すことが分かった。今後は,1本ずつのテープの役割を考えて,さらに検討をすすめたい。</p>
著者
前田 慶明 加藤 順一 東 祐二 糸谷 圭介 村上 雅仁 嶋田 智明
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.160-166, 2010
参考文献数
31

【目的】本研究の目的は,脳血管障害患者(CVA者)を対象に,非転倒者と転倒者の患者基本情報や入院時の下肢Br.stage,入院時FIM,Berg Balance Scale(BBS),Mini-Mental State Examination(MMSE)を用いて,転倒予測を判断するための判断基準について検討し,臨床現場に則した実践的な指標を確立することである。【対象】対象はCVA者53例(男性30例,女性23例,平均年齢67.0 ± 11.1歳)とした。【方法】入院時記録から,入院中の転倒有無,年齢,性別,病型,発症から入院までの期間,入院期間,麻痺側,入院時の下肢Br.stage,入院時FIM,MMSEを抽出し,また入院時にBBSを測定し,これらの患者特性と転倒との関連性を検討した。【結果】少なくとも1回転倒を経験したCVA者は19例,転倒者率は36%であった。非転倒群と転倒群の比較において年齢,入院期間,入院時FIM,入院時Br.stage,入院時BBS,MMSEに有意差を認めた。ロジスティック回帰分析の結果では,入院時BBSのオッズ比のみが有意であった。ROC曲線において有効なcut-off値は31点であると判断した。【結論】入院時のバランス能力がCVA者の転倒リスクと密接に関係しており,転倒予測を数値化することが可能となり,転倒予測する上でBBSが有用な指標である可能性が示唆された。