著者
堀 均 紺世 秀子
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

がん患者の免疫抑制の機構として,血中に増加するα-N-アセチルガラクトサミニダーゼ(α-NaGalase)によってマクロファージ活性化因子(GcMAF)前駆体が分解することが提唱されている.(Yamamoto,N.et al.,1998)このような機構を検証するため,種々のがん細胞におけるα-NaGalase酵素活性について解析を行った.さらにがん患者の免疫賦活を目的として,α-NaGalase阻害剤設計を検討した.1)がん細胞としてHCT116,HepG2細胞と正常細胞としてChung Liver細胞及びラットhepatocytesを用いて,α-NaGalase活性を測定したところ,がん細胞において活性が有意に上昇していた.この際,がん細胞中のα-NaGalaseが,endo型であるか,exo型であるかについてそれぞれのPNP基質を用いて調べたところ,endo型活性は認められなかった.がん患者血清中のα-NaGalaseに関しても同様に検討したところ,endo活性は認められなかった.これより,GcMAF前駆体であるGcProteinのα-NaGalaseによる糖鎖分解の機構(endo型切断)について再検討を要することがあきらかになった.一方,血清より精製したGcProteinからin situで得られたGcMAFによるマクロファージの0^-_2産生能の上昇が認められた.2)mannosidaze阻害剤でアザ糖であろスワンソニンに免疫賦活作用があることから,これをリード化合物として,その水酸基の2面角をコントロールして阻害するグリコシダーゼの種類を制御することを目的にsp2炭素の導入に基づく分子設計を行い,合成ルートの確立を検討した.その結果エナミン誘導体の合成に成功した.これらについてα-NaGalaseを含む各種グリコシダーゼ阻害活性について現在検討中である.