著者
松本 光代 大塚 美奈 鈴木 祐子 福井 宏行 町田 季衣子 向井 孝夫 大堀 均
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.59-65, 2005 (Released:2006-08-01)
参考文献数
34

ウシコロナウイルス(BCV)は主な牛下痢症を発症し,また牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)はウシに重篤な粘膜病を発症する可能性を持った病原体で,どちらも家畜飼育現場からの根絶が困難なウイルスである.本研究では消毒剤の新たな候補として電気分解陽極水のBCVおよびBVDVに対する不活化効果を検討した.電気分解陽極水は0.12%のNaClを含む水を電気分解して調製した.電気分解陽極水で1分間処理した両ウイルスを牛腎細胞に接種し,細胞上清の赤血球凝集反応もしくは細胞内RNAのRT-PCRによって,ウイルスの存在を検討した.その結果,電気分解陽極水で処理したウイルスは細胞内および培養上清から検出されなかった.本研究で調製した電気分解陽極水は,低pH値(3.0前後)であり,低濃度(7.0~20.0ppm)の遊離形有効塩素(EC)を含むことが示された.BCVの増殖はECを含まない低pH溶液あるいは低濃度のECを含むが高pH値(9.0以上)を示す溶液による各処理では阻害されなかったことから,電気分解陽極水のウイルス不活化はpHとECの相乗効果によるものと推察された.
著者
堀 均 紺世 秀子
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

がん患者の免疫抑制の機構として,血中に増加するα-N-アセチルガラクトサミニダーゼ(α-NaGalase)によってマクロファージ活性化因子(GcMAF)前駆体が分解することが提唱されている.(Yamamoto,N.et al.,1998)このような機構を検証するため,種々のがん細胞におけるα-NaGalase酵素活性について解析を行った.さらにがん患者の免疫賦活を目的として,α-NaGalase阻害剤設計を検討した.1)がん細胞としてHCT116,HepG2細胞と正常細胞としてChung Liver細胞及びラットhepatocytesを用いて,α-NaGalase活性を測定したところ,がん細胞において活性が有意に上昇していた.この際,がん細胞中のα-NaGalaseが,endo型であるか,exo型であるかについてそれぞれのPNP基質を用いて調べたところ,endo型活性は認められなかった.がん患者血清中のα-NaGalaseに関しても同様に検討したところ,endo活性は認められなかった.これより,GcMAF前駆体であるGcProteinのα-NaGalaseによる糖鎖分解の機構(endo型切断)について再検討を要することがあきらかになった.一方,血清より精製したGcProteinからin situで得られたGcMAFによるマクロファージの0^-_2産生能の上昇が認められた.2)mannosidaze阻害剤でアザ糖であろスワンソニンに免疫賦活作用があることから,これをリード化合物として,その水酸基の2面角をコントロールして阻害するグリコシダーゼの種類を制御することを目的にsp2炭素の導入に基づく分子設計を行い,合成ルートの確立を検討した.その結果エナミン誘導体の合成に成功した.これらについてα-NaGalaseを含む各種グリコシダーゼ阻害活性について現在検討中である.
著者
堀 均 永沢 秀子 宇都 義浩
出版者
徳島大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

本研究は,ドラッグをデンドリマーの手法を用いて球の表面に一定方向で固定したナノアセンブリー分子を設計・合成し,そのドラッグが本来持つ生物活性がどのように変化するか,キラリティーを超えるドラッグを作り出すことができるか,の2点を明らかにすることを目的とする.この目的を達成するためのリード化合物としてブレフェルジンA,スワインソニン,免疫抑制剤FTY720を選択した.本年度(最終年度)は,前年度までに分子設計・合成した種々のナノアセンブリー分子の鶏胚漿尿膜(CAM)法による血管新生阻害活性について評価した.免疫抑制剤FTY720は,冬虫夏草から単離された免疫抑制作用を示すISP-1(myriocin)の化学修飾によって不斉炭素を除去した,つまりキラリティーをなくした合成化合物であり本研究の目標に適したリード化合物である.FTY720のアルキル側鎖をアセチレンに置換したTX-2148(モノイン),TX-2152(ジイン),TX-2256(トリイン)の血管新生阻害活性はそれぞれ42%,90%,60%(10μg/CAM)であり,TX-2152はFTY720(77%)と同等以上の阻害活性を示した.この結果より,FTY720のオクチル基に対するバイオアイソスターとして疎水性及び分子サイズの大きく異なるジイン(もしくはトリイン)構造が示された.その理由として,剛直なポリイン構造によって分子の自由度が制限されるとともに,標的分子との相互作用の際の方向性が規定されたためではないかと考えられる.以上より,一定方向で固定したナノアセンブリー分子の生物活性がプラスに変化する事例を見出すことに成功したといえる.
著者
堀 均
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
1977

薬博第153号