著者
和田 慎太郎 八村 寿恵 山岡 佳代 白石 加南 久山 朋子 網本 昭輝
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.71-74, 2012-06-30 (Released:2013-06-30)
参考文献数
8

歯周病や歯内疾患がみられた犬7症例の多根歯に対してヘミセクションまたはトライセクション(分割抜歯)を実施した。患歯の歯冠を歯根の位置に対応するように分割し保存不可能な歯根を分割した歯冠とともに抜歯し,残された保存可能な部分は歯内療法を行い保存した。7症例中,歯周病により歯槽骨に垂直吸収の病変がみられた犬の5頭8歯(308:2歯,309:3歯,408:1歯,409:2歯),破折により歯髄の露出がみられた犬の2頭2歯(208:2歯)を対象とした。このうち,保存した部分は抜髄根管充填を行ったものが5歯,生活歯髄切断(断髄)を行ったものが5歯であった。経過観察では,術後426日で根尖周囲のX 線透過性の亢進と歯根膜腔の拡大を認めたために抜歯を行った症例が1例(1歯)あり,その他の症例では現在まで経過は良好であった。最長の症例では術後約4年で保存部分は良好に保たれている。
著者
小川 祐生 山木 誠也 八村 寿恵 鐘ヶ江 晋也 杉本 大輝 網本 宏和 岡本 芳晴 網本 昭輝
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.74, no.12, pp.810-817, 2021-12-20 (Released:2022-01-20)
参考文献数
9

ミニチュアダックスフント(以下MD)は上顎犬歯部の歯周病による口腔鼻腔瘻の好発犬種であるが,その進行パターンについては未だ不明である.今回,歯科処置時に上顎犬歯口蓋側の歯周ポケットが4mm以上ある症例,及び口腔鼻腔瘻が確認された症例を対象に回顧的研究を行い,MDと他犬種の歯科X線検査における上顎犬歯側面像の所見を比較した.その結果,歯周ポケット深度が同じ区分において,MDは他犬種よりも犬歯近位及び遠位の歯槽骨吸収像が少なく,吸収部位の吻尾方向への広がりが少ないと考えられた.また,MDは口蓋側方向の吸収程度を反映するホワイトラインの明瞭割合も高いことから,口蓋側方向への広がりも少ないと考えられた.以上より,MDの上顎犬歯部歯周病の進行は,水平吸収よりも口蓋側の垂直吸収が大きく進行する特徴を有すると考えられた.
著者
小川 祐生 八村 寿恵 山岡 佳代 和田 慎太郎 大成 衷子 網本 昭輝
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.97-100, 2016-09-25 (Released:2017-09-25)
参考文献数
9

猫の若年性歯周病は乳歯列から永久歯列への交換の時期に始まる歯肉・歯周炎であり,過形成性歯肉炎と若年性歯周炎に大別される。本症例は発症が4.5カ月齢時で,重度の歯肉炎や歯周炎がみられたことから若年性歯周炎と診断し,抗生剤やステロイドなどによる一般的な内科的治療を実施したが奏功しなかった。歯肉炎を起こし歯肉後退を起こした部分と,それに続く健康な歯を含めた全臼歯抜歯を実施したところ症状の軽快を得た。本症例により,第一選択の治療であるスケーリングや,ステロイド剤や抗生物質などの内科的治療に反応が見られない症例に対して,全臼歯抜歯が有効な治療法であることが示された。
著者
網本 昭輝
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.40, no.9, pp.666-668, 1987

上顎のくちばしを根元から喪失したセキセイインコに, 人工くちばしを応用し, 好結果を得た. 患鳥は元気食欲がなく, 補助給餌や強制給餌を行ったが6日経ってもまったく自分で採食できなかった. そこで, アクリル板で人工くちばしを作製し装着したところ, その直後から少しずつ採食できるようになった. しかし, 13日目でそのくちばしは脱落し再び採食ができなくなり, 2回目の人工くちばし (歯科用レジン歯で作製) を装着した. 2回目の人工くちばしはその後7日で脱落したが, その時には上顎のくちばしがわずかに伸長して少し採食できるようになっていたので, その後は補助給餌を行っただけで順調な回復がみられた. 人工くちばしの装着は, くちばしを喪失したセキセイインコに対して有効な治療法の一つであると思われるので, その概要を報告する.
著者
大成 衷子 小川 祐生 八村 寿恵 山木 誠也 鐘ヶ江 晋也 網本 昭輝
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.189-192, 2018

<p>ウサギの不正咬合では,臼歯の棘の切削処置のために頻回の麻酔が必要となる個体があり,頻回麻酔の影響が懸念されている.今回,当院で歯科処置のために1個体当たり39~103回の頻回の麻酔を実施したウサギ11例について,麻酔回数及び年齢に対する回復時間について検討を行った(頻回麻酔群).また,頻回麻酔群に含まれない同様の歯科処置を行ったウサギ67例について,初回麻酔時に同様の項目について調査を行った(コントロール群).頻回麻酔群では,麻酔回数と回復時間に相関がほとんどなかった.一方,加齢に伴い回復時間が有意に延長し,コントロール群でも同様の結果が得られた.両群の同じ年齢区分の比較で有意差はなかった.したがって,歯科処置などの侵襲の少なく,短時間の麻酔では頻回麻酔の影響よりも,加齢に伴う影響の方が大きいと推察された.</p>
著者
小川 祐生 山木 誠也 鐘ヶ江 晋也 杉本 大輝 八村 寿恵 網本 昭輝
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.71, no.12, pp.713-718, 2018-12-20 (Released:2019-01-20)
参考文献数
12

今回,われわれは犬の歯科X線検査における二等分面法の新たなX線入射角度決定法を考案した.この方法では,フィルム面の口腔外への延長線と撮影対象歯の歯軸で成す角を二等分する角度でX線を照射する.この新しい方法と従来から用いられてきた基本的な方法,及び近年提案された別の方法の3つの方法を用いて,頭蓋及び模擬フィルムで作成したモデルにおける入射角度決定の検証を実施した.作業開始から入射角度決定までの時間を簡易性,得られた入射角度による画像長変化率を正確性,及びそのばらつきを精度の指標とし,それぞれの初回実施時の傾向及び習熟の関与について比較検証を行った.われわれの考案した方法は角度決定時間が最も短く,得られた角度は他法と同等で,ばらつきも少なかった.このことから初心者にも理解のしやすく応用しやすい方法と考えられた.