著者
緒形 康 嘉指 信雄 田中 康二 樋口 大祐 濱田 麻矢
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

具体的内容 3年間の研究成果をまとめた学術論文集の執筆を中心とした活動を行い、緒形康編『一九三〇年代と接触空間-ディアスポラの思想と文学』双文社出版、2008年3月を出版した。意義 一九一四年から四五年における神戸の文化研究を進める中で、仁川、釜山、ソウル(韓国)や青島、上海、広州、台北(中国・台湾地域)等と神戸が有したネットワークが、複数文化の共生の技法を生み出す上で重要であることが明らかになった。本書は、そうした東アジア海港都市のネットワークが大きな社会的・文化的な役割を担った一九三〇年代を取り上げ、総力戦・戦時動員体制・ファシズムといった様々な位置付けがなされてきたこの時代を新しい視点から再考した点に学術的意義がある。重要性 一九三〇年代における亡命やディアスポラは、既存の国家や共同体からの離脱という形だけではなく、共同体内部の再編、あるいは個人の内面における転向や共同幻想の再編という形でも出現した。その先に現れるのは、様々な背景を持つ異文化間の「接触空間」(contact zone)である。本研究の重要性は、異文化の対立と衝突を超えて共生し合い、領有化された新たな接触空間の可能性を、亡命とディアスポラという政治的・文化的背景の中に探ろうとしたことである。