著者
耳塚 佳代
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.29-45, 2020-07-01 (Released:2020-08-27)
参考文献数
60

2016年のアメリカ大統領選を機に,「フェイクニュース」の拡散が社会問題化した。オンラインの有害な情報に対する懸念が高まり,メディアリテラシー教育にも変化が求められている。本稿は,「フェイクニュース」問題をめぐる国際的議論の方向性と海外におけるメディアリテラシーの新たな取り組みを精査し,日本の現状と課題を考察する。グローバルな議論においては,「フェイクニュース」現象が政治利用されていることから,前提として,この用語を使わずに情報区分を整理した上での偽情報・誤情報対策が主流となっている。一方,日本では依然として「フェイクニュース」がさまざまな情報を含む形で使用されている現状がある。また日本のメディアリテラシー教育は,新聞やテレビなど主にマスメディアが発信するメッセージを批判的に読み解くというアプローチが長く主流であった。しかし,党派的分断が進み,メディアに対する信頼が低下する社会においては,従来のアプローチが過度なメディア・既存体制不信と結びつき,自分の信念に合致する偏った情報のみを信じる素地にもなりかねない。こうした点を踏まえた上で,一定の効果が証明されている海外の取り組みを参考にしながら,日本のメディア環境・社会背景を考慮した「フェイクニュース」時代のメディアリテラシー教育について考えていくことが重要である。
著者
耳塚 佳代
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.29-45, 2020

<p>2016年のアメリカ大統領選を機に,「フェイクニュース」の拡散が社会問題化した。オンラインの有害な情報に対する懸念が高まり,メディアリテラシー教育にも変化が求められている。本稿は,「フェイクニュース」問題をめぐる国際的議論の方向性と海外におけるメディアリテラシーの新たな取り組みを精査し,日本の現状と課題を考察する。グローバルな議論においては,「フェイクニュース」現象が政治利用されていることから,前提として,この用語を使わずに情報区分を整理した上での偽情報・誤情報対策が主流となっている。一方,日本では依然として「フェイクニュース」がさまざまな情報を含む形で使用されている現状がある。また日本のメディアリテラシー教育は,新聞やテレビなど主にマスメディアが発信するメッセージを批判的に読み解くというアプローチが長く主流であった。しかし,党派的分断が進み,メディアに対する信頼が低下する社会においては,従来のアプローチが過度なメディア・既存体制不信と結びつき,自分の信念に合致する偏った情報のみを信じる素地にもなりかねない。こうした点を踏まえた上で,一定の効果が証明されている海外の取り組みを参考にしながら,日本のメディア環境・社会背景を考慮した「フェイクニュース」時代のメディアリテラシー教育について考えていくことが重要である。</p>